Solus Advanced Materials、サムスンディスプレイにQD-OLED用ETLを納品…Novaledの独占体制に変化


2025年3月14日 The Elec

 

QD-OLEDの新材料セット「QM3」に採用

高付加価値のa-ETLは依然としてNovaledが供給

 

Solus Advanced Materials(ソルース先端素材)がサムスンディスプレイに大型量子ドット(QD)-有機EL(OLED)用電子輸送層(ETL)材料を供給することが明らかになった。この市場はこれまでサムスングループのドイツ企業Novaledが独占してきたが、今回その体制に変化が生じた。

 

3月13日、ソルース先端素材は「国内TV向け次世代ETL材料の供給を開始した」と発表。さらに、「今回供給を開始したTV向けETLは、これまでドイツNovaledが独占していたが、新たに開発したETLの駆動電圧改善と寿命性能が認められ、次世代モデルへの採用が決まった」と説明した。

 

ソルース先端素材は顧客名を公表していないが、その顧客はサムスンディスプレイとみられる。また、ソルース先端素材が言及した「次世代モデル」は、QD-OLEDの新材料セット「QM3」を指すと考えられる。QM3は2023年末から量産適用が始まったとされる。

 

QD-OLEDのETLは一般ETLと正孔防御層(a-ETL: advanced-ETL)の2種類に分かれる。NovaledはこれまでQM1とQM2において、一般ETLとa-ETLの両方を供給してきた。

 

ソルース先端素材がQM3で納品するのは一般ETLであり、QM3においてもa-ETLは依然としてNovaledが供給している。なお、a-ETLは一般ETLよりも高付加価値な製品とされる。

 

ソルース先端素材は、Novaledによる特許無効訴訟の結果、先週自社の「電子輸送層(ETL)材料」関連の特許2件(登録番号2282799・2344831)が最終的に無効となったと発表した。しかし、同社はこれについて「新規事業の進出には影響を与えない」と述べた。ソルース先端素材にとって、QD-OLED向けETL材料は新規事業にあたる。

 

ソルース先端素材は「無効判決を受けた電子輸送層特許は自社の先行特許と類似しているという理由で無効となった」とし、「これらの特許は以前の世代モデルに適用されていた技術であり、今回は第3世代ETL材料の納品に成功した」と説明した。

 

これは、無効となった特許2件は、サムスンディスプレイの旧QD-OLED材料セット「QM2」(=「以前の世代モデル」)に適用可能な技術であり、ソルース先端素材はその後別の特許を確保するなどの方法で「QM3」(=「第3世代」)向けETLを納品したことを意味しているとみられる。

 

ソルース先端素材の説明通り、特許無効判決が新規事業に直接的な影響を与えないとしても、Novaledの攻撃によって同社の市場参入が遅れたのは否定できない。実際、先週無効となった特許2件と、ソルース先端素材の別の特許「有機エレクトロルミネッセンス素子(登録番号2216993)」1件について、2023年4~5月に特許審判院が無効と判断した際、業界ではソルース先端素材のQD-OLED用ETL供給計画に支障が出るのではないかとの見方が広がった。

 

Novaledは、この3件の特許のうち2件について2021年10月、1件について2022年3月に無効審判を請求していた。ソルース先端素材とNovaledが特許紛争の真っ最中だった2022年末、サムスンディスプレイはQD-OLEDの材料セットを「QM1」から「QM2」に変更した。

 

先月、特許法院(知的財産高等法院)がソルース先端素材の特許2件を無効と判決した後、ソルース先端素材が大法院(最高裁)に上告しなかったのは、2023年末からQM3向けETLを供給し始めたことで不確実性が解消されたと判断したためとみられる。

 

また、ソルース先端素材は別の「有機エレクトロルミネッセンス素子(登録番号2216993)」特許1件についてもNovaledと係争中である。2023年4月、特許審判院はこの特許も無効と判断したが、ソルース先端素材はこれに不服を申し立て、特許法院に審決取消訴訟を提起している。現在、まだ結論は出ていない。

 

Novaledはサムスングループの完全子会社であり、2023年6月末時点の株式構成は以下の通りである:

 

サムスンSDI:50.1%

サムスン電子(Samsung Electronics Europe Holding Cooperatief UA):40.0%

サムスンディスプレイ:9.9%

 

2023年のソルース先端素材のOLED材料売上は1,264億ウォンで、前年比14%増加した。2025年のOLED材料売上目標は1,350億ウォンである。一方、2024年の同社の全社売上は5,710億ウォン、営業損失は544億ウォンで、売上は前年比33%増加したものの、3年連続で営業損失を記録した。