April 24, 2023 UBIリサーチのWeekly Display Industry Analysis Report
◆青色有機EL材料の開発動向
➢ 高効率・長寿命化を目的として、TTF(三重項融合)蛍光、燐光、TADF(熱活性化遅延蛍光)、HF(超蛍光)などの青色有機EL材料の開発が盛んに行われている。
✓ これらの技術はFWHM(半値幅)の狭い青発光ドーパントを利用している。
✓ 青色ホスト材料として、三重項エネルギー安定性を有する材料の開発が求められている。
➢ 2023年5月にUBIリサーチから発行予定の「2023 OLED発光材料レポート」では、最近の青色OLEDの開発動向に関するレポートも掲載している。
◆UDCの開発計画
➢ UDCは、4月に開催されたOLED Korea 2023で、最近の青色燐光OLEDの開発状況を発表した。
✓ '22年にBlueの目標仕様を達成し、'24年の全燐光RGB構造の量産計画は予定通りすすんでいる。
✓ 量産初期段階の青色燐光体材料をタンデム構造で適用すれば、消費電力はmicroLEDよりも優れており、今後のディスプレイ競争で優位に立つと予想される。
➢ また、UDCはプラズモニックOLED技術の最近の進歩について説明し、Agカソード絶縁層上にAg nanopatch antenna (NPA)を形成し、デバイスの安定性を4倍以上向上させた。将来的には外部量子効率(EQE)を50%以上まで高めることができるため、量産化の可能性を検討している。
◆ 今後の予測
➢ ボロン系青色発光材料は、発光特性でFWHM(半置幅)が狭い割に、寿命が短いという問題があった。しかし、近年その性能が大幅に向上したため、量産用途や研究開発が最も盛んに行われている。
✓ SK-JNCの合弁会社は、ボロン系DABNA化合物のオリジナル技術を保有しており、LGディスプレイと共同で寿命と効率を改善した青色発光材料の開発を進めている。
✓ 出光やSFCなどの蛍光青色材料メーカーは、自社の所有している青色発光材類や新しいボロン系青色発光材料を活用し、FWHMが狭い材料の開発に注力している。
➢ 重水素技術は、LGディスプレイが重水素置換ホストを利用して大型有機ELテレビの輝度を向上させるなど、応用に成功しており、主要企業は重水素化蛍光体、燐光ドーパント、共通層材料の性能をテストしていて、より広い応用をめざしている。
➢ 近年、青色材料の寿命や量子効率が向上していることから、IT・TV向けOLED市場の拡大が加速し、AR・VRなどの次世代ディスプレイ競争においても有利なポジションを確保することができると考えられる。