韓国の有機EL分野の製造装置メーカと素材メーカの現状


2016.12.16 MSD

韓国内で活動しているディスプレイの製造装置メーカーを列記するには、ディスプレイの製造工程を理解する必要がある。各工程に供給される装置は、それぞれ異なって、その装置を作るメーカーも違う。それだけ多様な企業が多様に活動している。しかし、業界ではそれなりの名前を知られて活動する企業はあるはずである。それらの企業を調べてみた。

>>> OLED用の主要な製造装置メーカー

どの産業群でも市場をリードしていくメジャー企業は存在するはずだ。OLED製造装置の場合
①産業群での独占性
②装置の重要度
③受注規模
などを総合的に考慮してメジャーと呼ばれる企業を挙げると、APシステム、ビアトロン、テラセミコンダクター、エスエプエイ(SFA)、ウォンイクIPS(WONIK IPS)などが挙げられる。

①結晶化装置の強豪| APシステム
APシステムは、LTPS結晶化装置(ELA、Excimer Laser Annealing)は絶対強者だ。ELAはガラス基板上に蒸着されたa-Si層をp-Siに結晶化する装置で、LTPS TFT製造過程で最も重要度が高い工程である。APシステムは、サムスンディスプレイのELA装置を独占する中で、中国市場でも優位性を高めている。LTPS LCD用ELAは、日本のJSWが強力なライバルだが、LTPS OLED領域では、APシステムが独自な量産経験を持っている。 

②熱処理装置のリーダー| ビアトロンとテラセミコン 
ビアトロンとテラセミコンは熱処理装置市場のリーダーである。LCDとは異なり、OLEDは、高温の熱処理(Annealing)工程が必要である。特にフレキシブルOLEDでは、ポリイミド材料のプラスチック基板を形成するためのPIC(Polyimide Curing)工程が追加された。 
両社は、OLED熱処理装置の市場でトップの技術力と量産経験を確保している。テラセミコンは、サムスンディスプレイでのシェアが高く、ビアトロンは、LGディスプレーと中華圏市場での支配力が高い。 

③蒸着装置| エスエプエイ(SFA)
エスエプエイはOLED製造工程での搬送・後工程装置が主力である。OLED蒸着/封止工程は、真空環境で行わなければならないため、搬送システムも真空技術が必要である。この会社は、サムスンディスプレイの真空搬送システムを事実上の独占している。受注規模で断然に最大だ。エスエプエイは2015年にOLED発光層の蒸着装置(Evaporator)市場にも参入した。 

④OLEDの主要製造装置のラインナップ| ウォンイクIPS(WONIK IPS)
ウォンイクIPSはドライエッチ・メタル蒸着機などを供給している。ドライエッチ市場は競争相手が多いレッドオーシャンである。しかし、メタル(Cathode)蒸着機は、同社が市場でのリーダーの役割をしている。OLED TV用パネルは、陰極を透明に形成する技術が必要である。この時点で、ウォンイクIPSは、大きな役割を演じることができる。 
また、第6世代以下の中小型OLEDは、蒸着技術でFMM方式を使うが、第8世代以上のWOLEDはオープンマスク蒸着技術が適用される。ウォンイクIPSは、2010年からWOLED向けの蒸着装置を開発している。

⑤OLED蒸着装置| エスエプエイ(SFA)、Sunic(선익시스템)、SNU Precision (에스앤유) 
OLED発光層のための有機物質蒸着装置メーカーとしてはエスエプエイ、Sunic、SNUなどがある。OLED蒸着装置の市場では、日本のキヤノントッキの市場支配力が絶対的である。しかし、この会社は、アップルのiPhoneのためのフレキシブルOLEDの需要に対処するために受注が手一杯である。 

⑥マスク工程| JUSUNG ENGINEERING(주성엔지니어링은)、アバコ(AVACO、아바코)、INVENIA(인베니아)、ICD(아이씨디)、KCTECH(케이시텍) 、DMS 
OLEDの場合TFT素子の技術では、電子移動度が高いLTPSやメタルオキサイド(Metal Oxide)を使用する。 
a-Si TFTは、マスク工程の数が4~5回であるのに対しOxide TFTは、6~9回、LTPS TFTは、8~14回とマスク工程が多い。これは、蒸着PRコーティング、露光現像、エッチング、剥離、洗浄などの繰り返し工程の回数が増えることを意味する。 
これによりPECVD、Sputter、Coater、Scanner、Developer、Etcher、Stripper、Cleanerなどの機器の需要が増加する。これらに対応できる装置メーカとしては、JUSUNG ENGINEERING(주성엔지니어링은)、アバコ(AVACO、아바코)、INVENIA(인베니아)、ICD(아이씨디)、KCTECH(케이시텍) 、DMSなどがある。

⑦検査装置| HBテクノロジー、GigaLane(기가레인)、Youngwoo dsp (영우디에스피)、DE&T(디이엔티)、K-MAC(케이맥) 
OLEDは、まだプロセスが標準化されておらず、不良率を管理すべきポイントが多いため、検査装置の需要がLCDに比べて大きくなる。HBテクノロジーが関連代表企業である。加えてOLEDパネルの高解像度化に伴い、微細ピッチのパターンチェッカーも重要となる。ここでは、ギガレーン(GigaLane)が活動する。ギガレーンはファインピッチプローブユニット(Probe Unit)の分野で独走的な競争力を備えている。中小型OLEDビジョン(Vision)チェッカーシェアが高いYoungwoo dsp、大型ディスプレイのビジョン検査装置の専門メーカーであるDE&T、膜質の厚さとパーティクル測定器を主力とするK-MACなどもOLED検査装置市場で注目される企業である。

>>> OLED用の主要な素材メーカー

OLEDパネルの重要素材| 発光層の有機物質 
OLEDは、自主的に発光する有機物質を用いるディスプレイ技術である。輝度、コントラスト比、視野角、色再現性、リフレッシュレート(Refresh Rate)など、ほぼすべての光学的特性が、有機物質によって影響を及ぼされる。したがって、発光層の有機物質は、OLEDパネルで最も重要な材料である。OLEDは、電子(Electron)と正孔(Hole)が結合したときに発生するエネルギーを、有機物質固有の色で発光する原理を利用する。陽極(Anode)に電圧をかけて陰極(Cathode)に電流が流れるとき、発光効率を高めために多層構造の発光層を形成する。 

RGB OLEDの発光層構造:中小型OLEDで標準化されたRGBの技術の場合、陽極から陰極方向に正孔注入/輸送層(HIL / HTL)、発光層(Emission Layer:Red、Green、Blue)、電子輸送/注入層(ETL / EIL)を順次配置する。また、発光層の干渉を防いでくれるため隔壁の役割をするPDL(Pixel Defining Lay)がRGBの間に形成する。また、有機物質を保護し、膜を平坦化するCPL(Capping Layer)も重要な素材の一つだ。 

White OLEDの発光層構造:White OLEDは、BlueとYellow-Greenを2~3段階に垂直積層(Tandem)する構造が実用化されている。RGB方式との最大の違いは、FMM(Fine Metal Mask)工程を利用した水平的パターニングが必要なく、オープンマスク工程で造り上げるという点である。発光効率を高めてくれるため、各発光層の間にCGL(Charge Generation Layer)を配置する。この構造では、電流を流すと白色光が出て、光の進行方向にRGB(W)カラーフィルタを配置することにより、RGB色を実現する。つまり、WOLEDはOLED素子をバックライトとして活用することが基本コンセプトである。 
OLEDディスプレイは、韓国で最初に量産化されたため、LG化学、サムスンSDI、斗山(Doosan,두산)、DUKSAN Neolux(덕산네오룩스)など、国内メーカーが発光層材料の分野に多数布陣している。

フィルムメーカーの分野
フレキシブルOLEDが量産時代に進入する過程で、注目すべき分野がフィルムである。TFT基板、保護、封止、カバーウィンドウなどガラスに代わって、フィルム素材が入らなければならないからだ。代表的な素材がポリイミドである。 

①ポリイミド素材| SKCコーロンPI、コーロンインダストリー 
ポリイミドはプラスチック素材の中で、耐熱性・柔軟性と強度が最も優れている。このため、フレキシブルOLEDパネルでTFT基板素材にガラスの代わりにポリイミドが適用されている。 
また、工程中にキャリアの役割をしたガラスをLLO(Laser Lift Off)工程で分離し、その裏面に保護的に付けるベースフィルムもポリイミドが適用される確率が高い。平面や曲面などの固定されたフォームファクタでは、コストが低いPET系のフィルムを使っても構わないが、フォルダブル・ローラーブルなど曲げるパネルの形態では、TFT基板のポリイミドと熱膨張係数などの物理的特性が同じフィルムが必要だからである。 
パネルモジュールの表面に付くカバーウィンドウも強化ガラスを交換することができる柔軟な素材が必要である。透明で、スクラッチに強いながらも曲がる素材が必要で、ここにもやはりポリイミド系のCPI(Colorless Polyimide)フィルムが適用されることができる。 
結論としてフォルダブルOLEDは、▶TFT基板▶カバーウィンドウ▶ベースフィルムなど計3つの層にポリイミド材料が適用されるものと見られる。これに関連会社では、SKCコーロンPI、コーロンインダストリーなどがある。

②封止用フィルム| イノックス(이녹스)、i-components(아이컴포넌트)
OLED発光層材料は、有機材料の特性上、水分・酸素等に弱い。したがって封止(Encapsulation)工程の重要度が高い。曲がらないOLEDパネルは、ガラスを封止用材料として使えば良い。しかし、フレキシブルや、大面積なOLEDは、柔軟性・発熱・コストなどの問題により、フィルム素材の採用が増える。WOLED TVとフレキシブルOLEDパネルに入る封止用フィルムを提供する企業としては、イノックス(이녹스)、i-components(아이컴포넌트)などがある。

③工程用ケミカル| ソウルbrain(브레인)、ウォンイク(WONIK)マテリアル(원익머트리얼)、SKマテリアル、イエンエフテクノロジー(이엔에프테크놀로지)、LTC(엘티씨)、DONGJIN SEMICHEM (동진쎄미켐) 
OLEDは、蒸着PRコーティング、露光現像、エッチング、剥離、洗浄などの繰り返し工程の回数がLCDに比べて増える。これによりエッチング液、現像液、剥離液、洗浄液などの工程用ケミカルと特殊ガスメーカーも注目される。関連企業では、ソウルbrain(브레인)、ウォンイク(WONIK)マテリアル(원익머트리얼)、SKマテリアル、イエンエフテクノロジー(이엔에프테크놀로지)、LTC(엘티씨)、DONGJIN SEMICHEM (동진쎄미켐) などがある。 

>>>ディスプレイ用の主要な装置メーカーの紹介

ここから韓国内で活動しているディスプレイのための機器メーカーを簡単に見てみよう。

ウォンイクIPS(WONIK IPS) www.ips.co.kr
同社は、総合機器メーカーである。メモリ/非メモリ半導体蒸着装置のほか、ディスプレイ(LCD / OLED)エッチング装置、特殊ガスなどを営むメジャー総合機器メーカーである。 

APシステム www.apsystems.co.kr
1994年9月に設立された会社で、事業領域は、ディスプレイと、半導体装置(AMOLED 90%、半導体6%、LCD 1%、その他3%)であり、主な顧客は、サムスンディスプレイをはじめ、サムスン電子とEDO・天馬(Tianma)などである。資料によると、APシステムの主力取引先は、OLEDグローバル1位のサムスンディスプレイだ。APシステムは、FAB機器事業部、FPD機器事業部、レーザー機器事業部の3つの事業部を持っている。1999年RTP装置の国産化をはじめ、2002年にODF装置の国産化を遂げ、2005年には、レーザーアニール装置の国産化を成し遂げた。これらの機器の適用分野としては、半導体・LCD・AMOLEDなどの産業である。

ビアトロン www.viatrontech.com
2001年12月に設立された会社で、事業領域は、TFT熱処理装置(2014年基準:LTPS 76%、Oxide 16%、フレキシブル7%、その他1%)である。そして、主な顧客は、サムスンディスプレイ、LGディスプレー、BOE、CSOTなどである。ビアトロンの事業は、ディスプレイ装置を製造するのに、具体的にはLTPS TFTまたはOxide TFTを用いたAMOLEDや、高解像度LCD・フレキシブルディスプレイなどの次世代ディスプレイパネルの全工程の中で、基板(Backplane)の製造に適用される熱処理装置を生産するものである。

Sunic(선익시스템) www.snuprecision.com
1998年2月に設立された会社で、サムスンディスプレイが持分5.3%を持っている。事業領域は、ディスプレイの検査と蒸着装置(LCD 94%、OLED 6%)などを製造する。主な顧客は、サムスンディスプレイ、BOE、GVOなどである。説明によると、同社はOLED蒸着装置のハードウェアおよびソフトウェアを併せてすべて供給することができる。

ローツェシステムズ www.rorze.co.kr
1997年11月に設立された会社で、事業領域は、LCDや半導体搬送装置(77%)、GCM(レーザーグラスカット)機器(11%)などである。主な顧客は、サムスンディスプレイ、BOE、GVOなどである。

INVENIA(인베니아) www.inveniacorp.com
2001年1月に設立された会社である。持分率はグジャジュン20.1%、LGD 12.9%、LG電子5.8%などである。LIGのニアは、ディスプレイ装置(LCD / OLED)を供給し、主要顧客は、LGディスプレー・BOE・AUOなどである。説明によると、同社はDry Etcher、OLED蒸着装置、合着機、検査機器などのLCDとOLEDのための装置のラインナップが様々なことが強みである。加えて、中小型パネルだけでなく、第8世代以上の大面積パネル製造装置も保有している。 

ICD www.icd.co.kr
2000年2月に設立された会社で、事業領域は、ディスプレイ装置(AMOLED 75%、LCD 3%、部品22%)を供給するものである。主な顧客は、サムスンディスプレイ、LGディスプレー、CSOT、天馬などである。外部調達に依存していたESC(エッチング工程で、基板固定および温度制御の中核部品)の自社開発を成し遂げたこの会社は、AMOLED機器にかなり重点的に投資を継続したことが分かった。


エスエプエイ www.sfa.co.kr
エスエプエイ(SFA)は、1998年に設立された会社で、ディスプレイ装置、太陽電子機器、半導体機器FAシステム、自動車機器、航空宇宙機器用機器などを製造している。この会社は、最近、半導体パッケージング専門会社であるSTS半導体を買収している。これにより、半導体後工程事業の成長性を確保したと評価される。 
STS半導体は、国内OSATメーカーの中で最大の生産設備と高付加パッケージング(Bumping、Flip Chip、16段スタッキング技術など)の技術を保有している。

JUSUNG ENGINEERING www.jseng.com
JUSUNG ENGINEERINGは、半導体だけでなく、ディスプレイ・太陽光・照明などの分野までその領域を広げて機器を開発している。ソンエンジニアリングは、半導体の成膜装置のオプション半球シリコン蒸着、原子層堆積の分野などの特定の工程で、独自の技術力を保有している。

テス www.hites.co.kr
テス(TES)は、2002年に設立された半導体、太陽電池、ディスプレイ、化合物半導体などの機器を製造する会社である。高い技術力をベースにしたPECVD装置をサムスン電子とSKハイニックスに供給している。 

TOPTEC www.toptec.co.kr
TOPTECは自動化設備と代替エネルギー、再生可能エネルギー関連会社である。取扱品目では、クリーンプロセス装置、ディスプレイ装置、ベルト製造設備、太陽電池モジュールなどである。主な事業は、ディスプレイ(LCD。OLED)、二次電池、自動車部品、半導体などの製造装置を提供する工場の自動化の分野である。 

Youngwoo dsp (영우디에스피) www.ywdsp.com
ディスプレイ検査装置の専門メーカーである。OLED、LCD、LED、半導体装置を製造する。TVやモニター、携帯電話の液晶のような製品の画面に利用されるディスプレイが本来の役割をすることができるかどうか検査する機器を生産する。

シンソン www.shinsungfa.kr
シンソンはプロセスオートメーション機器メーカーであり、2008年8月、シンソンE&Gの人的分割(シンソンホールディングス、シンソンE&G、シンソンエフエー3社)に設立された会社である。主な事業は、半導体、フラットパネルディスプレイや太陽電池の生産ラインの工程の自動化機器を生産することである。