2019.09.01 ET News
有機EL(OLED)は、韓国ディスプレイ産業の重要分野だ。技術の変化と中国の追撃に液晶(LCD)事業は、収益性が低下している。サムスンディスプレイとLGディスプレーはパラダイムシフトを予測して将来に対応し、中小型と大型OLEDの分野で主導的地位を確保した。
しかし、国内OLED産業を俯瞰すると、ディスプレイの重要な、色を表現する発光材料は、外国製が多数ある。燐光技術を持つ米国UDC、350年の歴史の、ドイツの化学企業メルク、日本の出光興産やJNCなどが韓国OLEDに重要な材料を供給している。基礎科学力と長い時間蓄積されたノウハウが融合した結果だ。
なかなか入り込む隙間がないように見えるOLED材料の開発に挑戦している韓国のベンチャーがある。「マテリアルサイエンス」だ。
韓国の素材産業環境で、世界的な化学企業と競争しているOLED材料の分野では、同社は、最も難しい青色発光材料の商用化を目指し出た。
◇青色OLED材料の国産化に挑戦
OLEDで青色が最も発光効率が落ちる材料だ。100の電子が注入されたとき、青色光で発光するのは40にとどまる。60は消えて効率が落ちる。
それだけ改善が急がれる材料が効率を引き上げるのは容易ではない。現在では、他の選択肢がない効率が低い状態でOLEDに適用されるのが実情である。
開発に成功した場合、市場性が高く、競争が激しいように見える。先発企業が積み上げた特許障壁があるので、市場への進入自体が容易ではない。この分野で最も進んだメーカーに選ばれる出光興産が1995年から開発を始め、幅広い特許権を設定したことで有名である。
それにもかかわらず、マテリアルサイエンスは、2017年に青色のドーパント(dopant)の技術を確保する成果を収めた。ドーパントは、光を出す材料で「ホスト」材料と一緒に発光層を形成する。
どうして可能になったのだろうか。まず、会社は青色材料の分子設計のためにOLED素子の発光メカニズムを理解することに焦点を当てた。多くの材料のうち、適切な材料を迅速に見つけることだ。また、素子の研究を通じて設計された分子構造を実現するために、新規合成法を開発した。既存の合成法だけでは、競合他社の特許を逃れることができないからだ。
マテリアルサイエンスの技術最高責任者(CTO)は、「新規の合成法で前になかった新しい化合物を作ることが可能だった」と説明した。
◇国内外面に海外で先に事業化
マテリアルサイエンスは、技術力を認められる時間はかからなかった。中国のOLEDパネルメーカーに多数の正孔輸送層(HTL)材料を供給した。OLEDを構成する素材は、発光層(ホスト、ドーパント)を中心に正孔輸送層(HTL)と電子輸送層(ETL)に区分される。青色発光材料の開発が最終的な目標であるが、会社運営に必要な基盤作りのために市場性、事業化の可能性が高い素材から商用化した。
地道な努力の結果、中国OLEDディスプレイメーカー3社と取引をして売り上げも100億ウォン台まで増加した。しかし、逆にまだ国内企業との取引は皆無である。国内のディスプレイメーカーは決められた素材のサプライチェーン(SCM)に変化を与えようとしなかった。新興企業で、小規模企業であるために十分な技術の評価も受けなかった。マテリアルサイエンスは、生き残りのために海外市場を開拓するしかなかった。その結果が現在の姿である。
最近では口コミで、国内業界でもマテリアルサイエンスに興味を示している。昨年、国内のある大手企業がマテリアルサイエンスの技術の可能性を認め、40億ウォンを投資した。また、青色OLED材料の国産化のために、共同研究開発を進めている。
しかし、長い道のりである。究極の目標であり、目指すところである青色OLED発光材料の商用化には、解決すべき課題も多く、障害も少なくない。また、マテリアルサイエンスだけでなく、多くの材料専門企業が登場している。材料産業の底辺とサプライチェーンが拡大されなければ、海外メーカを追い抜くことができない。
マテリアルサイエンス代表は、「発光層よりも技術的難易度が比較的低い共通層は、すでに中国の追撃が始まった」とし「韓国は高付加価値の材料で差別化をしていかなければならないし、すべてのことを中小企業ができることはではない」と指摘した。
それとともに「高効率青色材料は、国内外の誰もがまだ開発していなかったため、国内のディスプレイメーカーと材料企業が協力して、次世代の製品を開発する場合、韓国が名実共に技術主導権を握ることができる」とし、政府支援と大企業と材料専門企業の協力が切実だと強調した。