ニュースイッチ 10月21日(金)
化学大手各社は折り曲げ可能なフレキシブル型有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)パネル向け部材分野へ参入する。三菱ガス化学は耐熱性と透過率で業界トップ級の基板用ポリイミドワニスを開発。東ソーは水などの透過を防ぐガスバリアー(遮断)材料のサンプル出荷を始めた。2017年以降に次世代有機EL搭載のスマートフォンが市場投入される見通し。日本の素材産業は液晶部材での高シェアを維持すべく、次世代領域でも商品開発を急ぐ。 三菱ガス化学は耐熱性が約490度Cで透過率も90%と高い基板用透明ポリイミドワニスのサンプル出荷を始めた。顧客となる液晶パネルメーカーの既存製造設備を有機ELへ転用する場合は、製造工程上で基板にも高い耐熱性が求められる。 併せて、表層に貼り付けるウインドーフィルム向けも開発。原料のポリイミドは繰り返しの折り曲げ特性が売りの一つだ。同社はすでに委託生産でフィルムの量産体制を確保した。 東ソーは水に対して従来比で10倍以上の低透過性を持つガスバリアー材料を開発して、ディスプレーフィルムメーカーなど約20社との商談に入った。有機EL発光層の上部に貼り付けるガスバリアー膜は、水や酸素による発光層の劣化を防ぐ役割がある。現在は委託生産だが、今後生産量が増えれば自社で量産体制を敷くことを検討する。 化学大手では他に、宇部興産は基板フィルム向けのポリイミドワニスが韓国サムスン電子の有機EL搭載スマートフォンにすでに採用されている。耐熱性や耐薬品性に優れ、原料一貫生産も強みという。 住友化学は独自のタッチセンサー技術を生かしてフレキシブル有機ELパネル向けの機能統合部材の開発に力を入れている。 世界のスマートフォン市場は中国勢の台頭を背景に競争が激化。サムスンや米アップルはフレキシブル有機ELの採用で商品の差別化を図りたい考えで、今後、関連部材の需要も急速に拡大する可能性がある。