サムスン電子からのW-OLEDパネルのテレビの発売は見送られるか


2022.05.23 The Elec

 

LGディスプレイが製造するW-OLEDパネルを採用したサムスン電子製のOLEDテレビは、今年は発売されないと予想される。テレビ市場の業況悪化と液晶パネルの価格下落により、サムスン電子がW-OLEDテレビを急いで発売する理由がなくなった。サムスン電子とLGディスプレイは来年にテレビの完成品の発売を目標にするという日程で、W-OLED供給交渉を継続すると見込まれる。

 

23日、業界によると、サムスン電子が年内にLGディスプレイのホワイト(W)-有機EL(OLED)を適用したテレビを発売する可能性は希薄になったとようだ。今月、新政府発足と11月開幕する2022カタールワールドカップなどが両社のW-OLED供給交渉の動機になるという期待もあったが、今月も下旬に入り、今年よりは来年に発売を計画であるという観測が優勢になった。

 

何より、サムスン電子の立場でLGディスプレイからのW-OLEDパネル供給交渉を急ぐべき理由がなくなった。テレビ市場の業況が悪くなっており、液晶(LCD)パネルの価格も下落傾向であるからだ。

 

今年、全世界のテレビ市場は昨年よりも縮小するという見通しが優勢だ。ロシアのウクライナ侵攻長期化とコロナ19による中国封鎖などでグローバル景気不確実性が高まっている。インフレ圧力なども消費心理に悪材料だ。

 

大型LCDパネルの価格はコロナ19拡散前の水準に落ちた。コロナ19が拡散していた2020年6月から1年余り上昇した大型LCDパネル価格は昨年下半期から下落傾向が続いている。サムスン電子が昨年LGディスプレイとW-OLED供給交渉を始めた時とは環境が変わった。

 

同時に両側の交渉過程でサムスン電子がLGディスプレイ側にW-OLED技術と関連して共同開発を要請した点も交渉進展に障害物として作用したと推定される。LGディスプレイの次世代W-OLED技術開発にサムスン電子が参加すれば、LGディスプレイの立場では一部の技術に限って使用に制限が生じる。サムスン電子が共同開発を理由に特定の技術に対して独占契約を要求できるからだ。

 

LGディスプレイは今年のW-OLED出荷量目標達成に支障をきたす可能性が生じた。LGディスプレイの今年のW-OLED出荷量目標1000万台には、サムスン電子にW-OLEDを200万台供給するという期待が反映されている。すでに第1四半期LGディスプレイのW-OLED在庫が少なくなかったことが分かった。

 

ただし、両社が来年を目標に交渉を続ける可能性は依然として残っている。サムスン電子のミニLEDテレビである「ネオQLED」などLCD製品だけでは他の中国テレビメーカーと差別化が難しく、サムスンディスプレイが量産中のクアンタムドット(QD)-OLEDだけではOLEDテレビラインナップを構成するのが難しい。

 

さらに、サムスン電子の次世代プレミアムTVラインナップの主要軸になると予想されたクォンタムドットナノロッド発光ダイオード(QNED)技術は量産時期が不透明だ。当初、昨年第4四半期または今年第1四半期に予想されたサムスンディスプレイのQNEDパイロットラインの設置が延期され、QNED量産時点を予測するのが難しい状況となった。少なくとも数年間、QNEDの量産を期待するのが難しいため、サムスン電子がOLED TVをプレミアム製品ラインナップの主要軸に含めるという観測が優勢だ。

 

一方、最近業界ではサムスン電子とLGディスプレイのW-OLED供給交渉は今月が分水嶺になるという展望が出た。完成品の生産と物流、マーケティングなどを考慮すれば、今月中に交渉を終えなければ年内に完成品の発売が可能だという点からだ。だが、新政府発足とカタールワールドカップなどを除いた消費心理萎縮など残りの要素は交渉進展の障害物という評価を受けてきた。

 

市場調査会社トレンドフォースは今年、OLEDテレビ出荷量見通しを昨年1月の846万台から先月779万台に下げた。サムスン電子とLGディスプレイのW-OLED交渉遅延を反映した。今年、全世界のテレビ出荷量見通しも2億1700万台から2億1200万台に減った。インフレ圧力などで今年テレビ市場は昨年(2億1000万台)よりも逆成長する可能性が高い。