2023年5月23日 The Elec
Samsung Displayは、新しい工法である『ハイブリッドOLED』を車載ディスプレイに適用する方法を検討しています。ハイブリッドOLEDは、従来の車載ディスプレイに適用されていたリジッドOLEDよりも薄く、曲面表現が可能です。また、Samsung Displayが既存のA2ラインではなく、A3ラインで車載OLEDを量産すると、大画面一体型ディスプレイのサポートも可能になります。これにより、大画面や一体型などに進化する車載ディスプレイ市場の攻略が期待されています。
業界によると、Samsung Displayはハイブリッド有機ELディスプレイの技術を車載ディスプレイに適用する方法を検討していると報じられています。ハイブリッドOLEDは、ガラス基板に薄膜封止(TFE)を適用する新しい技術です。Samsung Displayはこれまで、車載ディスプレイにリジッドOLEDを採用してきました。
ハイブリッドOLEDは、リジッドOLEDと比較して、ガラス基板の上層(ガラス封止)を薄膜封止に置き換え、0.5T(mm)厚のガラス基板の下層を0.2T厚の『ウルトラシン(UT)基板』にエッチングするため、より薄くなります。薄膜封止は、ポリイミド(PI)基板を使用するフレキシブルOLEDに主に適用されている技術です。
Samsung DisplayがハイブリッドOLEDを使用して車載ディスプレイを作成すると、曲面ディスプレイの実現が期待されます。Samsung Displayが従来の5.5世代A2ラインで製造しているリジッドOLEDは、ガラス基板の上下に配置されているため、曲面の実現が難しいです。一方、Samsung Displayが開発中の6世代A3ラインで製造されるハイブリッドOLEDは、リジッドOLEDよりも薄く、曲げることができます。
さらに、Samsung DisplayがA2ラインではなくA3ラインで車載用OLEDを量産すると、大画面の実現が可能になります。5.5世代A2ラインでは、薄膜トランジスタ(TFT)プロセス後に基板を4分割(クォーターカット)してOLEDを成膜しますが、6世代A3ラインではTFTプロセス後に2分割(ハーフカット)し、OLEDを成膜するため、大画面の製作に余裕が生まれます。
A3ラインで車載用ハイブリッドOLEDを量産すると、一度に30インチ以上の大画面ディスプレイの製作も可能と予想されます。最近の完成車メーカーは、運転席から助手席まで連結された一体型ディスプレイなど、大画面製品を求めています。
Samsung DisplayはA3ラインで車載用ハイブリッドOLEDの量産を検討する中で、2層の発光層を持つツースタックタンデム(Two Stack Tandem)構造も顧客の要求に応じて適用可能と予想されます。Samsung DisplayがAppleに納入するために開発中のiPad用OLEDには、ツースタックタンデム構造が初めて適用されます。Samsung Displayは昨年8月のIMIDで車載用OLEDにツースタックタンデム構造を適用する計画を示唆していました。現在、Samsung Displayは車載用ディスプレイに発光層が1層のシングルスタック(Single Stack)構造を適用しています。
一方、LG DisplayはPI基板を使用するフレキシブルOLEDでツースタックタンデム構造の車載用OLEDを数年間量産しています。LG Displayでは、PI基板を適用するOLEDを「プラスチックOLED」(P-OLED)と呼んでいます。LG DisplayがAppleに納入するために開発中のiPad用OLEDにもハイブリッドOLED技術が適用されます。
PI基板を使用するフレキシブルOLEDは、画面が大きくなると端が湾曲するという欠点があります。そのため、AppleはiPadなどのIT製品にハイブリッドOLEDを採用することにしました。一方、AppleのiPhoneにはすべてフレキシブルOLEDが適用されています。
市場調査企業オムディアによると、昨年の世界の車載用ディスプレイの出荷量は1億9530万台でした。今年は前年比5.4%増の2億590万台と予測されています。今年の2億590万台のうち、OLEDの出荷量は100万台程度です。