2016年08月17日 kaisto新聞 酸化チタンと導電性高分子利用で、柔軟性失わないながらも効率を最大化...ウェアラブルデバイスなどに活用されることを期待できる。 ▲フレキシブルOLEDの構造と電界強度分布 (a)研究チームが開発したOLEDの模式図。(b)酸化チタンと導電性高分子を使用すると、共振現象が起きるので、OLEDの効率が高い。 電気電子工学のユ教授とPOSTECH新素材工学科のイ教授の共同研究チームが、損傷することなく繰り返し曲げることができ、効率に優れた有機EL(OLED)デバイスを開発した。今回の研究では、国際学術誌のネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Com-munications) 6月2日のオンライン版に掲載された。 グラフェンを、既存の透明電極に変わりに採用 エッジ型スマートフォン、曲面OLEDテレビなどに使用されているフレキシブルOLED技術は、フレキシブルOLEDを曲面形状にした後、固定する方式を使用している。最近では、さらに丸く丸められているか、折りたたみのフレキシブルOLEDの開発も続けて行われている。繰り返し曲がるフレキシブルOLEDを作るためには、曲げた時に壊れてない電気的、光学的特性を維持することができる素材が必要である。既存のOLEDは、曲げると割れる酸化インジウムスズ(ITO)の透明電極を使用するので、繰り返し曲がるフレキシブルOLEDを作る場合は不的確である。これを解決するために、研究チームは、厚さが原子レベルで非常に薄く、柔軟性が良く、電気的特性と光学的透明性も従来の透明電極に次ぐ特性を示す、グラフェンをOLEDの電極として使用した。 発光効率向上させる複合透明電極層 しかし、グラフェンを用いたOLEDは、発光効率が低いという欠点があった。OLEDは、一般的に共振現象*を活用して、発光効率を高める。この時、共振現象を起こすには、光を一定量以上反射する電極が必要で、グラフェンだけでは、光の反射が少なくOLEDの発光効率を向上させるには限界があった。研究チームは、この問題を解決するために、グラフェンと酸化チタン(TiO2)と導電性高分子を結合した複合透明電極層を開発した。グラフェンの上下部に、屈折率が高い酸化チタンと屈折率が低い導電性高分子を積み重ねて電極を作成し、電極の光有効反射率を高めたものである。 SPPの形で失われた光最大限に減らして OLEDは、発光分子が金属層の近くにある構造であるが、この構造では、有機分子層と金属層の境界面で金属内の電子の集団的な振動により、表面プラズモンポーラリトン(Surface Plasmon Polariton、以下SPP)と呼ばれる電磁波が発生する。SPPは、OLEDの効率を低下させる主な要因であり、一般的に誘電体層の屈折率が低いほどSPPが少なく発生すると知られている。今回の研究では、研究チームが開発した複合透明電極層に使用された導電性高分子の屈折率が低く、SPPで損失される光を低減し、OLEDの効率を向上させることができた。その結果、研究チームは、量子効率**が40.5%であるOLEDを実装した。これは、同じ発光材料を用いて製作されたグラフェンベースOLEDの中で最も高い数値だ。 柔軟かつ効率の高い研究チームのOLED 複合電極層のグラフェン、酸化チタン、導電性高分子は、発光効率を最大化しながらも、柔軟性を相当なレベルに維持するという利点がある。研究チームは、酸化チタン膜が曲がる時に割れないようにするための独自のメカニズムがあり、既存の酸化物透明電極よりも4倍高い変形も耐えることを確認した。また、研究チームが開発したOLEDは、曲線半径2.3mmで1000回の曲げ後も、明るさの特性が変わらなかった。この高効率フレキシブルOLEDは、ウェアラブルデバイスやポータブル機器など、様々なところに活用されると予想される。 ユ教授は「OLEDディスプレイだけでなく、センサーにも活用することができる」とし「今回開発したOLEDを人体付センサ用光源として使用することの研究を進めている」と明らかにした。 共振現象* 特定の振動数を持つ物体が同じ周波数の力が外部から加えられるとき、振幅が大きくなり、エネルギーが増加する現象。 量子効率** 物質の中で光子や電子が他のエネルギーの光子または電子に変換される割合。