アップルがサムスンディスプレイとLGディスプレイに『WOLED+CF』OLEDoS開発資料の要請書を送付


2024-06-28 The Elec

 

Appleが韓国の二つのパネルメーカーに対して、OLED+CF OLEDoSの開発に関する資料要求書を送った。Appleが今年初めて発売したMRデバイス「Vision Pro」の出荷量を増やし、主要部品であるOLEDoSを安定的に確保するためのものと見られる。

 

ソニーはVision Pro用のOLEDoSを納品しているが、生産能力を増やしていない。中国のSeeYaは技術と地政学的な不安要素がある。国内の二つのパネルメーカーがAppleの要求に積極的に対応するかは不明である。それぞれの状況が異なる。

 

28日の業界関係者によると、Appleは最近、サムスンディスプレイとLGディスプレイに対し、OLEDoS(OLED on Silicon)の開発に関する資料要求書(RFI:Request For Information)を送ったとされている。RFIは、製品仕様が決まった後にセットメーカーが部品メーカーに送る見積依頼書(RFQ:Request for Quotation)より前の段階でやり取りされる文書である。RFI段階では製品開発に必要な技術に関する情報などを問い合わせる。

 

RFIで言及されたOLEDoSは、ホワイト(W)-有機EL(OLED)にカラーフィルター(CF)を適用する方式の製品である。WOLED+CF OLEDoSは、WOLEDからの白色光が赤(R)・緑(G)・青(B)のカラーフィルターを通過することで色を表現する。今年初めにアメリカで先行発売されたVision ProもWOLED+CF OLEDoSを使用している。

 

製品の追加仕様は、画面サイズ2.0~2.1インチ、画素密度1700PPI(Pixels Per Inch)レベルなどである。既存のVision ProのOLEDoS仕様である画面サイズ1.42インチ、画素密度3391PPIなどとは異なる。RFIで言及されたOLEDoSの画素密度が低いため、普及型モデルを狙ったものと推定される。

 

業界では、AppleのRFI送付の背景を、①普及型製品の発売によるVision Proの普及拡大、②OLEDoS供給網の安定化の観点で見ている。既存のVision Pro基本モデルの価格が3500ドル(約48万円)より低い価格で製品が発売されれば、混合現実(MR)など拡張現実(XR)デバイスの普及拡大が期待できる。製品仕様と価格は比例する。Vision Pro基本モデルの価格3500ドルのうち、OLEDoSの価格は456ドル(2個、約7.3万円)であった。

 

AppleのOLEDoS協力会社であるソニーは、OLEDoSの生産能力を増やす計画はない。ソニーのOLEDoS生産能力は年間90万台が最大とされている。中国のSeeYaがAppleにOLEDoSを納品する候補会社として浮上しているが、技術力が不安定である。SeeYaは米中貿易紛争による地政学的リスクも抱えている。Appleが韓国の二つのパネルメーカーにRFIを送ったのもこのためと推定される。

 

この二つのパネルメーカーがAppleの要求に積極的に対応するかは不明である。

 

サムスンディスプレイはWOLED+CF OLEDoS生産ラインを持っているが、ここはサムスン電子やその他のITメーカーをターゲットにしたラインである。WOLED+CF OLEDoS自体が技術の差別化が難しく、普及型モデルの場合、収益性も低い。

 

サムスンディスプレイはAppleに対してRGBサブピクセルを同一層に隣接蒸着するRGB方式のOLEDoSを納品する計画を持っている。RGB OLEDoSを適用したApple Vision Proは、早ければ2027年~2028年に発売が期待される。

 

LGディスプレイはWOLED+CF OLEDoSを優先して開発してきたが、まだ生産ラインがない。すぐにLGディスプレイがWOLED+CF OLEDoSラインを構築するのは難しい。

 

RGB OLEDoSはカラーフィルターを使用しないため、WOLED+CF OLEDoSよりも輝度(明るさ)において強みがある。WOLED+CF方式では、WOLEDからの白色光がRGBカラーフィルターを通過する過程で輝度が落ちるためである。現在、WOLED+CF OLEDoSは多くの企業が量産中であり、RGB OLEDoSは米国のeMaginが軍用として生産中である。eMaginは昨年サムスンディスプレイが買収した。