Visionox、フレキシブルOLED工場を建設するが、収益性に懸念


2020.12.22  THEELEC

 

中国のVisionox(ヴィジョノックス、中国名:维信诺)が、2020年12月の二番目フレキシブル有機EL(OLED)の生産ラインに続き、広州OLEDモジュール工場も稼動し始めた。しかし、収益性の懸念がある。利益は政府の補助金を除けば、赤字であるうえ、規模の恩恵にも期待しにくいとの指摘が出ている。

 

中国のメディアアのイジーウェイなどによると、2020年12月に広東省広州のジャンチェン経済技術開発区で、広州OLEDモジュールの生産ラインの稼働式典が開かれた。ここは、中小型フレキシブルOLEDモジュールの生産拠点である。

 

Visionoxは12月7日に、安徽省合肥の中小型6世代フレキシブルOLED生産ライン(V3)も稼働に入った。2018年12月に440億元(約7兆4000億ウォン)を投資して着工した工場である。合肥ラインは河北省アンカーの6世代フレキシブルOLED生産ライン(V2)に続く第二のフレキシブルOLED工場である。2つの工場の月産量は基板投入基準で3万(30K)枚である。

 

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合肥の中小型6世代フレキシブルOLED生産ライン(V3)

 

合肥ラインではハイエンド用パネルを作る予定である。ここでは、タッチ電極をパネルに内蔵するオンセル(On-Cell)方式と低温多結晶酸化物(LTPO)方式パネルを生産することができる。加えて江蘇省昆山に5.5世代リジッドOLED生産ライン(V1)を保有している。V1の月の生産量は15K枚である。

 

しかし、持続された投資を行うVisionoxのOLED事業については疑問視されている。生産ラインを、当面の市場の需要より政府支援金を望んで造ることは、他のメーカーと似ているが、大きな規模の競合他社に押されるという見方がある。

 

Visionoxは、市場シェアではそれほど悪くない。市場調査会社のストーン・パートナーズによると、2020年第2四半期のフレキシブルOLED市場でのビジョンオックスシェアは1.9%で4位である。同じ期間でのBOE(24.4%)には大きく劣るが、CSOT(1.5%)に対しては小幅であるが上回っている。今後はフレキシブルOLEDは、中低価格製品に適用が拡大され、市場が大きくなる。中低価格製品のリジッドOLED市場では、Visionoxは、第3四半期は5.6%のシェアで2位。1位はサムスンディスプレイ(89.5%)、3位はエバーディスプレイ(4.8%)である。また、天馬はリジッドOLED市場から撤退する予定である。

 

しかし営業の実績を見ると、様相が違ってくる。Visionoxの2017〜2019年の営業利益は、それぞれの年で3200万元、17億7800万元、26億9000万元である。2020年第3四半期の累積営業利益は20億900万元である。純利益は2017〜2019年、1500万元、3500万元、6400万元である。2020年第3四半期の累積的にはマイナス( - )2700万元である。ライバルであるBOEとTCL、天馬などが上げた、数百億元の売上高と数十億元の純利益と比較すると、Visionoxは規模が小さく、収益性も低い。

 

Visionoxは、政府の補助金の割合も大きい。

 

現地メディアは「VisionoxがOLED事業の収益の完全な資料とレポートを作成していない」とし「投資家が利益率の安全性と価値を測定できない」と指摘した。ディスプレイ業界の関係者は、「VisionoxがOLED生産ラインを増やしているが、稼働率が高くない」とし「Visionoxが製造装置を発注しても、追加発注がいつ出るか予測するのは難しい」と述べた。

 

現在、中国には20ライン以上のOLED生産ラインが構築されたり、建設中である。6世代基板サイズのフレキシブルOLEDパネルに投資する中国企業はVisionoxほかBOE(成都・綿陽・重慶・福州)、天馬(武漢・シャーマン)、TCL(武漢)などである。地元メディアは、市場調査会社オームディアによるとOLED産業で中国企業の市場シェアが2017年5%から2022年に26%に上昇する見通しだが、Visionoxの見通しは不明だと予想した。