FMMや蒸着装置市場も「ツスタックタンデム」向けで成長


 2022.04.19  The Elec

 

全世界のOLED FMMの売上予測は、成長率が来年から鈍化した後、2025年に再び急成長するという見通しが出た。2025年はサムスンディスプレイとLGディスプレイなどが開発中のIT用8.5世代OLED技術を活用したパネル量産が始まると予想されるためである。ロードマップの通りなら、これらの製品の多くには、発光層を2層に積み重ねるツースタックタンデム構造OLEDが適用される。

 

19日、市場調査会社オムディアと業界筋によると、世界の有機EL(OLED)ファインメタルマスク(FMM)の売上と、その成長率が今年にピークを迎え、来年から鈍化した後、2025年頃に成長傾向が再び拡大する見通しだ。

 

FMMは、赤(R)錆(G)青(B)有機物を発光層に蒸着する際に使用するマスクである。現在、スマートフォンOLEDを量産する6世代(1500×1850mm)ラインなどで主に使用する。

 

全世界のOLED FMMの売上は今年は4億7300万ドル、2023年5億9700万ドル、2024年7億1200万ドル、2025年8億2500万ドル、2026年9億9600万ドルに増える見通しだ。年度別成長率は今年28%、2023年26%、2024年19%、2025年16%に落ち、2026年21%の反騰が予想される。

 

年度別のOLED FMM出荷面積は今年25万9000平方メートル(㎡)、2023年32万7000㎡、2024年39万㎡、2025年49万㎡、2026年63万4000㎡で順次増加が予想された。その成長率も今年28%、2023年26%、2024年19%に鈍化した後、2025年26%、2026年29%になる見通しだ。

 

このように、OLED FMMの売上(2026年)と面積(2025年)の反騰には、IT製品用OLED量産状況が大きな役割を果たすものと見られる。今後の数年間、中国パネルメーカーのフレキシブルOLEDライン稼働率上昇と、現在の40%水準のスマートフォンOLED浸透拡大などが期待できるが、こうした要因が新たな成長要因になるにはパワー不足である。

 

2025年には、サムスンディスプレイとLGディスプレイなどが開発中のIT用8.5世代(2200×2500mm)OLED技術を適用したパネルが量産され始めると期待される。これらの製品には、発光層を2層に積み重ねる「ツスタックタンデム」方式OLED構造を適用する。発光層を2層に積むため、FMM使用回数がそれだけ増え、新規需要と交換需要が同時に発生する。

 

2024年に出ると予想されるアップルの最初のOLED iPad(12.9・11.0インチ)の2つのモデルもツスタックタンデムOLEDを適用する予定だ。ただし、これらの製品はLGディスプレイとサムスンディスプレイが第6世代ラインで量産する計画だ。その後出てくるアップルのIT製品OLEDは、8.5世代ラインで生産する可能性が高い。ツースタックタンデム方式は画面明るさは2倍、製品寿命は4倍まで拡大できる。

 

このように中型OLED市場が6世代から8.5世代へと転換を控えた時点で、韓国内マスクメーカーも8.5世代FMM市場開拓に挑戦している。従来の第6世代OLED FMM市場は、大日本印刷(DNP)が事実上独占中である。

 

風源精密(Poongwon Precision)はまずサムスンディスプレイに第6世代用FMMを一部供給した状況だ。だが量産向けの納品まで確保するには越えなければならない難関が多い。風源精密FMMがDNP製品と同じ品質を提供しつつ、価格も低くなければサムスンディスプレイがサプライチェーンを多様化する誘因が生じるが、このような条件を満たすことは容易ではない。風源精密は8.5世代用FMM技術も開発している。

 

8.5世代市場を狙って「個別セル」方式FMMを開発中のオラムマテリアルは最近200億ウォン内外投資金を誘致した。加えて、電気鋳造メッキ方式のダブルユーオエス(エレクトロウェーブで物的分割)も現在8.5世代用FMMを開発中だ。ダブルユーオエスはエレクトロウェーブで第6世代用FMM量産で困難を経験したことがある。同様に全州メッキ方式のFMMを開発してきたフィロプティクスは、中国パネルメーカーと第6世代用FMM評価に突入した。APSホールディングスはレーザー方式でFMMの国産化に挑戦している。

 

一方、IT用8.5世代OLEDでFMMとともに重要技術である蒸着装置も開発中である。LGディスプレイはサンイックシステムと8.5世代ハーフカット・水平方式蒸着機を開発している。サムスンディスプレイは日本のアルバクと8.5世代フルカット・垂直方式蒸着機を開発してきたが、水平方式蒸着機の開発も有力候補となった。BOEも四川省成都B16工場にIT用8.6世代(2250x2600mm)OLEDラインを構築する計画だ。

 

世界1位の蒸着装置メーカーのキヤノントッキについては、ある関係者は「キヤノントッキがパネルメーカーと装備を共同開発すれば契約事項に独占などキヤノントッキに不利な項目が生じる可能性がある」とし「顧客を多く増えたキヤノントッキがあえて特定企業と8.5世代蒸着装備を共同開発する必要はない」と明らかにした。