Appleの折りたたみディスプレイプロジェクト、サムスンディスプレイは折りたたみスマートフォン、LG ディスプレイは折りたたみIT製品をそれぞれで担当する見込み


2024.06.04  The Elec

 

Appleが折りたたみプロジェクトをパネルメーカーごとに分けて進行中だ。Samsung Displayは折りたたみスマートフォンに近い製品のパネルを、LG Displayは折りたたみIT製品のパネルをそれぞれ開発する方向が有力だ。まだ製品仕様は最終決定されていない。

 

業界によると、Appleは最近、Samsung DisplayやLG Displayなどに折りたたみ製品の開発関連資料要求書(RFI: Request For Information)を送ったことが確認された。RFIは製品仕様が決定された後にセットメーカーが部品メーカーに送る見積依頼書(RFQ: Request for Quotation)よりも前の段階でやり取りされる文書だ。RFIの段階では製品開発に必要な技術関連情報などを問い合わせる。

 

仕様は決定されていないが、Appleは韓国のパネルメーカー2社とそれぞれ異なる折りたたみ製品プロジェクトを進行中だ。Samsung Displayは折りたたみスマートフォンに近い製品、LG Displayは折りたたみIT製品プロジェクトを担当している。

 

先に業界に知られたAppleの最初の折りたたみ製品として期待されている7インチ後半から8インチ前半の製品は、折りたたみiPhoneに近いモデルと推定される。この製品は、8.3インチのiPad miniに似たサイズの製品である可能性が指摘されたモデルだ。現在、このモデルのパネルはSamsung Displayが開発中だ。現状が続けば、該当する折りたたみ製品のパネルはSamsung Displayが単独で供給することになる。これは量産経験と生産能力によるものだ。

 

Samsung Displayは2019年からSamsung Electronicsの折りたたみスマートフォン用パネルを量産してきており、AppleのiPhoneやiPadのパネル、Samsung ElectronicsのフラッグシップスマートフォンであるGalaxy Sシリーズおよび折りたたみスマートフォン用パネルを製造するA3およびA4生産ラインで折りたたみパネルの生産量を処理できる。Samsung Displayは昨年12月、Appleの折りたたみ製品への対応能力集中、拡張現実(XR)機器用マイクロディスプレイチームの独立などを骨子とする組織改編を行った。

 

Appleはこの製品の形態について、ブックタイプのフォルドとクラムシェルタイプのフリップのどちらにするかまだ決定していないとされている。Samsung Displayの協力会社も両モデルに対応する準備をしている。

 

LG Displayは開いたときに10インチ台後半の画面サイズの折りたたみIT製品プロジェクトを進行中だ。この製品は開いたときに10インチ台後半のサイズであり、iPadモデルと推定される。オペレーティングシステムも既存のiPadと同じものが適用される可能性が高い。

 

LG Displayも複数の協力会社と折りたたみIT製品プロジェクトを進行中だ。しかし、LG Displayが現在進行中の折りたたみスマートフォンプロジェクトはないとされている。

 

LG Displayは折りたたみパネルを少量生産してきたが、Samsung Displayに比べて量産経験が不足し、生産能力も低い。LG DisplayがiPhoneおよびiPadのパネルを製造しているE6-1からE6-4ラインでは、多くの追加生産をこなすのは難しい。このため、LG Displayが既存の生産能力を維持したままAppleの折りたたみスマートフォンプロジェクトに参加したとしても、生産できる量は少なくなるしかない。1万5000枚(15K)規模の生産ラインを新たに構築するには数千億ウォン単位の投資が必要となる。

 

業界では早ければ2026〜2027年頃にAppleの最初の折りたたみ製品が出るかもしれないという観測があるが、Appleの事業特性上、2026年の発売は難しいという見方が優勢だ。まだ製品仕様も決定されていない。

 

さらに、仕様競争よりも製品の最適化によってユーザー体験の最大化を目指すAppleの立場からすれば、折りたたみ製品の技術はまだ完成していない。Appleが折りたたみ製品を発売するためには、折りたたみパネルのカバーウィンドウであるウルトラシンガラス(UTG)の中央部のしわの問題が解決されなければならない。UTGを支えるヒンジ機構、およびAP(アプリケーションプロセッサ)も支えなければならない。

 

Appleはこれまで国内の2つのパネルメーカーに、折りたたみパネルのUTG中央のしわが解消されない限り、折りたたみ製品を発売するのは難しいという意向を示してきた。折りたたみスマートフォンのUTG中央のしわを解消することは、2019年から折りたたみスマートフォン市場をリードしてきたSamsung Electronicsですらまだ終わっていない課題だ。

 

Samsung Electronicsが今年後半に発売予定の折りたたみスマートフォンGalaxy Z Flip6のUTGの厚さを、前作の30マイクロメートル(μm)よりも厚い50μm前後にするのも、中央のしわを減らすためである。UTGが厚くなると簡単に割れるのを防ぎ、しわも目立たなくなる。しかし、UTGが厚くなるとそれだけ折りたたみにくくなるため、新しい構造のヒンジが必要となる。Samsung Electronicsは来年のGalaxy Z Flip7モデルに、従来よりも厚い新しい構造のUTGと新しい構造のヒンジを適用する予定である。

 

Appleにとって、ヒンジ生産において重要な工程である金属射出成形(MIM: Metal Injection Molding)の供給網も確保する必要がある。MIM市場には中国企業が多い。中国のHuaweiの折りたたみスマートフォンの出荷量が増えるにつれ、Huaweiへの納品を狙うMIM企業も増えている。折りたたみ製品をいつ発売するか分からないAppleよりも、すでに折りたたみスマートフォンを積極的に販売中のHuaweiと協力する方が、MIM企業の業績に即座に役立つ可能性がある。

 

Appleが折りたたみ製品を発売するには、UTGやヒンジ、AP問題などをすべて解決する必要があるが、2026年は今から2年少々しか残っていないため、時間が迫っている。このため、業界では早くても2027年にならなければAppleが折りたたみ製品を発売できないだろうという見方が優勢だ。2027年はAppleの最初のiPhone発売20周年、最初のOLED iPhone発売10周年となる年だ。

 

Appleの折りたたみ製品の発売の可否と時期は、iPhoneの次元での変化が必要であることに加え、中国のプレミアムスマートフォン市場でHuaweiのシェア拡大、そしてHuaweiなどの中国スマートフォン企業の積極的な折りたたみスマートフォン出荷量の増加により注目されている。市場調査会社Counterpointによると、今年第1四半期の世界折りたたみスマートフォン出荷量ランキングでHuawei(35%)がSamsung Electronics(23%)を抜いて1位になった。

 

2019年に米国政府の制裁でスマートフォン事業が縮小したHuaweiが、昨年から再びスマートフォンの出荷量を増やし、中国市場にも変化が現れている。低価格品を主とするOppo、Vivo、Xiaomiとは異なり、Huaweiは2019年前後からAppleやSamsung Electronicsなどと世界のプレミアムスマートフォン市場で競争してきた。中国市場でHuaweiのスマートフォン出荷量が増え、iPhoneの出荷量が減少すると、AppleはiPhoneの割引販売で対応している。中国情報通信技術研究院(CAICT)によると、中国でのiPhoneの販売量は今年1~2月に前年同期比37%減少し、3月と4月にはそれぞれ12%、52%増加した。