3年間で利益半減...韓国のディスプレイ製造装置メーカーの危機


2021-07-26  MK News

 

京畿道水原市にあるディスプレイ装置の「A」企業は最近、中国のパネル企業に巨額の資金支援を見返りに技術協力を提案された。日本が独占していた有機EL(OLED)製造装置を国産化したA社の能力に注目したものだ。 A社は技術流出に対する可能性のために提案を拒否したが、この中国のパネル企業は韓国内で他の投資先を探しているという。

 

資金難に苦しむ「強小企業」を中心に株式投資や買収・合併(M&A)の噂も広がっている。 A社の関係者は「最近、国内のディスプレイ素材・部品・装置企業が業績低下に悩まされている隙に、中国の甘い誘惑が相次いでいる」とし、「韓国のディスプレイ産業の生態系が萎縮するなかで、誘惑に負ける企業が続々と出てくるかもしれず怖い」と語った。

 

韓国ディスプレイ産業が中国に1位を奪われた衝撃波は、このように後方の「ソブジャン(素材・部品・装置)」の生態系全体に広がっている。ディスプレイ産業を率いるサムスンとLGディスプレイが投資規模を3分の1の水準に減らしたうえに、人手不足と技術流出の懸念はますます深刻になっている。素・部・装企業の売上げと収益そして雇用はともなって減少傾向を見せている。

 

サムスンディスプレイとLGディスプレイは液晶表示装置(LCD)への追加投資を事実上はやめてOLEDに集中し、新規の設備投資は引き続き減らしている。韓国産のパネル原価の71%水準で低価格攻勢を繰り広げる中国の追撃にLCD事業を奪われ、OLEDを最後の砦としている状況だ。サムスンディスプレイとLGディスプレイの施設投資は、2017年はそれぞれ13兆5000億ウォンと6兆6000億ウォンに達したが、昨年は4兆ウォンと2兆5000億ウォンに過ぎない。この3年で3分の1に減ったわけだ。

 

前方パネル企業の投資縮小は後方の素材・部品・装置企業の業績萎縮に直結する。毎日経済新聞が売上げを基本に上位20社のディスプレイ装置会社(売上高全体のうちでディスプレイの割合が20%以下であるところを除く)の実績を調査した結果、昨年の合計売上高は5兆2103億ウォンで、2017年(7兆7240億ウォン)に比べて33%減少した。同じ期間の営業利益の合計は8142億ウォンから4012億ウォンで51%、雇用人員も7902人から6890人に13%減少した。

 

<strong>ディスプレイ生態系は数字で見える実績だけでなく、質的競争力も減退している。</strong>

 

ディスプレイ産業の最大の懸案の一つは人材不足だ。韓国ディスプレイ産業協会(KDIA)によると、2019年の時点で人材不足を訴えたディスプレイパネルおよびモジュール企業は17.4%だった。工程・装置の企業は42.3%で、素材・部品企業は40.2%にのぼった。 KDIAはフォルダブル(折りたたみ式)とローラーブル(巻き取り式)そしてマイクロ発光ダイオード(LED)などの次世代ディスプレイ分野では約5.5%の人材が不足していると独自に推定した。ディスプレイ業界の関係者は「政府の補助金やインフラ支援を背にした中国企業が開発人材を国内比2~3倍の賃金でスカウトしている」とし、「技術流出のリスクは高い」と心配した。

 

さらに悪いことに、OLED中心のディスプレイ産業が再編されていくなかで、技術競争力さえも下落している。国内のLCD産業の国産化率は機器71%と素材・部品が65%で、半導体よりも相対的に高い方だった。しかし技術的な難度が上がったOLEDの装置の国産化率は56%で、素材・部品は57%とKDIAは把握している。フレキシブルOLEDの実現に必須のポリイミド(PI)や、OLEDの蒸着工程に活用する精密金属マスク(FMM)のような一部の核心素材は日本に全量を依存している。

 

国内ディスプレイ産業界は、生態系全般の活力を復元するためには、政府の投資・インフラ支援や税制優遇などが必須だと口をそろえる。この他に核心的な技術人材を養成して国内にとどまるようにする人的支援も必要としている。

 

素・部・装企業はまた、これまで互いに牽制してきたサムスンとLGの協力も支えになるべきだと主張している。現在、国内の素・部・装企業は慣行上はサムスンディスプレイあるいはLGディスプレイのいずれか一社にだけ製品を供給するが、これは素・部・装企業の特定グループに対する依存度を過度に高めるという指摘が多い。

 

これに関連して、サムスン電子は最近LGディスプレイのテレビ用OLEDパネルの使用を検討することが伝えられ、業界の期待を集めている。匿名を要求したディスプレイ部品社の役員は、「米国・日本の素・部・装企業はサムスンとLGの両方ともに供給できるが、国内パートナー社は事実上禁止された状況」だとし、「政府のインフラ支援も重要だが、パネル企業の前向きな協力も産業生態系の活力に不可欠」だと語った。

 

産業界は「産業の眼」と呼ばれるディスプレイ産業の活力を必ず維持しなければならないと強調している。半導体産業とともに第4次産業全般の競争力を結論付けるためだ。フォルダブルフォンやローラーブルテレビなどの次世代ディスプレイフォームファクタを適用した製品だけでなく、最近ではほとんどの自動車・電子製品にディスプレイが使用される。また輸出と雇用に投資など、経済に対する寄与度の面でも重要性は大きい。

 

26日の統計庁と韓国貿易協会(KITA)によると、昨年の韓国の輸出におけるディスプレイ産業が占める割合は約3.5%(180億ドル)に達した。 2019年の韓国製ディスプレイパネルメーカーと素材・機器メーカーなどの生産額(財・サービスの価値)の合計は約67兆7780億ウォンだ。韓国の国内総生産(GDP)の4.4%に相当する。同じ年のディスプレイ産業の雇用は8万8000人だった。大半の製造企業が欧州や米国そして中国などの海外需要先に工場を移転しているが、ディスプレイメーカーはまだ国内に生産基盤を維持している。

 

ディスプレイ産業はコロナ19によって非対面時代が到来しつつ、重要性はさらに拡大すると予想される。自律走行車や医療機器やモノのインターネット(IoT)など、急成長が予想される分野にもディスプレイ装置は必須だ。