2024年12月26日 Trend Force
中国のレンズ製造業界が激しい内部競争に直面し、一部のレンズモデルが「水1本より安い」と言われるほどの価格で取引されている、と経済日報が報じました。同紙が引用する業界筋によれば、華為技術(ファーウェイ)の関連会社でさえこのプレッシャーに耐えきれず、OPPOやVivoなどのスマートフォンブランドへのレンズ供給を停止したとのことです。
報道によると、問題の華為子会社は中嵐電子(ZET)で、同社は3年前、日本のカンタツが所有していた連雲港工場を取得して注目を浴びました。カンタツはかつてAppleのiPhoneレンズサプライチェーンの一部でしたが、2021年にAppleの指示で市場から撤退。同工場の買収にはSunny Optical、AAC Technologies、GSEOといった大手企業が関心を示しましたが、最終的に中嵐電子が予想外の勝者として産業界で注目されました。
しかし、中嵐電子の成功は長く続きませんでした。買収後、カンタツはiPhoneのサプライチェーンから外れ、代わりにSunny Opticalがその地位を引き継ぎました。一方、中嵐電子は急成長を遂げたものの、パンデミックや米中貿易摩擦、そして特にスマートフォン市場の需要低迷といったグローバルな逆風により、その進展が妨げられました。同報道の時点で、中嵐電子は公式なコメントを出していません。
深刻な過剰生産能力が招いた価格競争
中国のレンズ産業は深刻な過剰生産能力に苦しんでおり、過酷な価格競争が展開されています。二流・三流メーカーの多くは、赤字を出してでも注文を確保しようとするあまり、積極的な価格引き下げに追い込まれています。この業界の厳しい状況を象徴する言葉として、「一部のレンズは水1本より安い」とさえ言われています。
2023年末、在庫水準が正常化する中で、大手企業である大立光電(Largan Precision)やSunny Opticalは、5P(5枚プラスチックレンズ)以上の高級レンズの価格を引き上げ、一時的に価格競争を緩和しました。しかし、2024年のスマートフォン市場全体の回復は期待を下回る結果となりました。Appleなどの大手ブランドが新モデルを投入する努力を重ねたにもかかわらず、レンズの仕様アップグレードは控えめなままです。例えば、iPhone 16シリーズでは、ペリスコープレンズがフラッグシップモデルに採用される一方で、ほとんどのレンズは前世代の仕様を維持しています。
特許訴訟と長期供給契約による市場支配
経済日報によれば、Larganは2021年に特許訴訟を通じてHonor、OPPO、Vivo、Xiaomiなどのブランドと長期供給契約(LTA)を締結し、高級レンズ注文で圧倒的なシェアを獲得しました。この契約には、7P・8Pレンズのすべての注文と6Pレンズの50%のシェアが含まれており、高級スマートフォンレンズ市場でのリーダーシップを固めました。この戦略により、Larganは中国市場での価格決定力と安定した供給量を確保しました。しかし、中・低級市場(特に5P以下のレンズ)は依然として激しい競争にさらされており、工場稼働率を維持しようとするメーカーが赤字覚悟の価格戦略を採用しています。
中嵐電子の供給停止とOPPO・Vivoの対応
同報道によると、中嵐電子は累積する損失により、最近、フロントカメラや3P/4Pレンズ、FOD(指紋認証用レンズ)、IoTレンズの供給を停止しました。この突然の決定により、OPPOとVivoは台湾のレンズメーカーに緊急に支援を求め、供給不足を補う動きを余儀なくされています。