2025年2月7日 The Elec
中国のLens Technology(以下、Lens社)が、Appleの折りたたみ製品向けカバーウィンドウ「ウルトラシンガラス(UTG)」の第一供給メーカー(ファーストベンダー)となる可能性が高いことが、2月7日に明らかになった。UTGのガラス原板は、米国Corning社が供給する見込みである。
業界関係者によると、Lens社の量産実績、技術力、資金力が強みとして挙げられる。Lens社はすでに中国のスマートフォンメーカーに対して、折りたたみスマホ向けUTGを納品した実績を持つ。特に、UTGの強化処理やカット後の側面のひび割れ最小化において、Lens社の技術は比較的安定しているとされている。
しかし、折りたたみデバイス向けUTG市場はまだ本格的に開花しておらず、安定した量産歩留まりを確保したメーカーは存在しないのが現状だ。
Lens社はエッチング技術も保有している。AppleはUTGの中央部のみを薄くエッチングするコンセプトのUTGを好む。中央部分だけを薄くすれば、UTG全体の厚みを確保できるため、耐久性を強化できる。また、UTG全体の表面を平坦化する際にもエッチング技術が必要となる。
Lens社は資金力も強みとされており、年内にUTG生産ラインを増設する計画であることが分かっている。
Apple向けUTGの市場シェアと韓国企業の参入可能性
業界では、Lens社がAppleの折りたたみ製品向けUTGの約70%を供給すると予想している。残りの約30%は、韓国のUTGメーカーなどが納品できる可能性がある。
現在、AppleのUTG第二供給メーカー(セカンドベンダー)の候補として、韓国の「ドウインシス(Dowoo Insys)」と「ユティアイ(UTI)」が挙げられている。
韓国企業の状況
ドウインシス(Dowoo Insys)
・Samsung Displayのサプライチェーンに属し、「Galaxy Z Foldシリーズ」向けUTGを量産している。
・しかし、Appleはドウインシスを通じてUTG技術がSamsungに流出することを警戒している。
Samsungは「Galaxy Z Flipシリーズ」向けUTGの後加工を直接行っており、一部のエッチング工程は協力会社「Econi」が担当している。
・以前はエッチング技術を持たないと評価されていたが、2023年10月に「中央部のみを薄くエッチングするUTG」に関する特許(登録番号2714615・2714616)を取得した。この2件の特許は2023年3月に出願され、7カ月で登録されたことから、特許取得を急いだと推測される。
ユティアイ(UTI)
・UTGの折り曲げ部分(中央部)を薄くエッチングする技術を保有している。
・Samsungの折りたたみスマホ向けUTGのサプライチェーンにも含まれている。
・しかし、UTGの量産経験がないことが課題とされている。
Appleの折りたたみ製品サプライチェーンの特徴
Appleの折りたたみデバイス向けサプライチェーンでは、UTGとヒンジが主要な注目部品とされる。これは、折りたたみ製品の製造コストを削減できる部品が、ほぼこの2つに限られるためである。また、Appleは部品の設計主導権を維持することで、収益性を確保しようとしている。この「設計主導権」は、Appleだけでなく、部品メーカーの利益にも大きく影響する。
Appleの折りたたみデバイスの展望
Appleは2026年下半期に初の折りたたみ製品を発売する計画を立てている。
この製品の折りたたみパネルは、Samsung Displayが単独で供給する可能性が高い。
ただし、LG Displayも参入を狙っていると見られる。