フラウンホーファー、高輝度なOLEDマイクロディスプレイのための高電圧CMOSバックプレーンを開発


2025年4月22日 Fraunhofer IPMS

 

有機EL(OLED)の輝度を高く保ちながら長寿命を維持するための一般的な方法として、複数のOLED層を積層する手法が知られています。ドイツのフラウンホーファー・フォトニックマイクロシステムズ研究所(Fraunhofer IPMS)の科学者たちはこのたび、非常に高輝度なマイクロディスプレイを可能にする革新的な高電圧CMOSバックプレーンを開発しました。この新技術は、2025年5月13日から15日までアメリカ・サンノゼで開催される「SIDディスプレイウィーク2025」において初めて一般公開される予定で、ドイツパビリオンのブース番号1135にて紹介されます。

 

0.62インチSXGAの高電圧CMOSバックプレーンとOLEDを組み合わせたこの技術は、優れた画像品質と高輝度を必要とする多くの用途に恩恵をもたらします。たとえば、拡張現実(AR)用のスマートグラスでは、さまざまな光環境下でも鮮やかで視認性の高いコンテンツ表示が求められ、また仮想現実(VR)用のヘッドセットでは、リアルで明るい映像表現が可能になります。さらに、軍事分野においても、極限環境下で命令や状況インジケーターを明確に表示できるため、有用性が高まります。

 

0.62-Inch SXGA High-Voltage CMOS Backplane with OLED
0.62-Inch SXGA High-Voltage CMOS Backplane with OLED
0.62-Inch SXGA High-Voltage CMOS Backplane with OLED
0.62-Inch SXGA High-Voltage CMOS Backplane with OLED

 

OLEDは過酷な環境において非常に高い輝度を出すには限界があるとされてきました。そのため、マイクロLEDが代替技術として注目され、輝度が100万cd/m²にも達すると言われています。しかし、マイクロLEDは高解像度マイクロディスプレイに必要な非常に高い画素密度においては効率が著しく低下し、1A/cm²を超える電流密度での駆動が必要になります。加えて、フルカラーでの実用化もまだ発展途上にあります。一方、OLEDでは長寿命運用時の電流密度は通常100mA/cm²未満に抑えられています。

 

こうした課題を克服するために、有機EL層を複数積層することで性能を大きく向上させることができます。各OLED層の電流密度を抑えることで寿命と信頼性を確保しながらも、積層によって全体の発光性能を向上させることが可能です。ただし、積層によりOLED全体にかかる電圧降下とスイングは増大します。そこで今回、こうした高輝度OLEDマイクロディスプレイに対応するために開発されたのが「高電圧CMOSバックプレーン」です。

 

フラウンホーファーIPMSの「マイクロディスプレイおよびセンサー」部門の責任者であるウーヴェ・フォーゲル博士は次のように述べています。「私たちは、10ボルトを超える電圧スイングを実現できる革新的な画素セル設計を開発しました。これにより、トップエミッティング型の複数積層OLED層の駆動が可能となります。積層の数に応じて、発光効率を高く保ちながらも、一定の電流密度で最大発光量を複数倍にすることができます。この手法により、寿命や信頼性を維持しながら、フルカラーで1万cd/m²を超える最大輝度を実現することが可能になります。」