サムスンディスプレイ社長、「IT OLED、TFT分野では研究する部分が多い」


 

2024.08.14 The Elec

 

サムスンディスプレイのチェ・ジュソン社長は、IT製品用の有機EL(OLED)技術について「(薄膜トランジスタ-TFT)性能は、酸化物か、従来の低温多結晶シリコン(LTPS)かについて研究する部分が多い」と明らかにした。サムスンディスプレイのIT第8世代OLEDラインTFTは酸化物で設計された。

 

チェ社長は14日、ソウル・COEXで開かれたK-Display展示場ツアー後、取材陣との質疑応答でこのように明らかにした。

 

チェ社長は「IT OLEDの顧客や数量確保の戦略は何か」という質問に対し、「IT OLEDはまだ始まったばかりだ」とし、「8.6世代(IT OLED)も投資してすぐに生産を始めるが、既存の6世代(OLED)と比較して事業規模が異なり、(TFT)性能も酸化物か、そうでなければ既存のLTPSかなどの部分について勉強する部分が多い」と明らかにした。

 

彼は「複数の顧客と多くのコミュニケーションをしている」とし、「最近、オンデバイス人工知能(AI)と加わり、(IT OLEDは)多くのシナジーが生まれると思う」と期待した。また、「顧客社以外にもインテル・クアルコムなど様々なシステムパートナーと協業して良いソリューションを提供する」とし、「スマートフォンでOLEDで差別化したことをIT製品までつなげられるように努力したい」と付け加えた。

 

社長がIT製品OLED用TFTを言及したのは、当初計画していたIT第8世代OLEDラインの酸化物TFTに対する悩みの反映とみられる。サムスンディスプレイのIT第8世代OLEDラインは、赤(R)緑(G)青(B)サブピクセルを同じ層に隣接蒸着するRGB方式だ。RGB方式OLEDに酸化物TFTを適用するのは今回が初めてだ。

 

酸化物TFTは低消費電力に強みがあり、製造コストを下げることができるが、電子移動度が現在、スマートフォン・タブレットなどに使用しているLTPS TFTと比べると10分の1に過ぎない。スマートフォン・タブレットに使用されているOLEDは、第6世代ラインで量産中である。ハイエンドのスマートフォン・タブレットなどに使用する低温多結晶酸化物(LTPO)TFTもLTPS TFTをベースに、部分的に酸化物TFTを適用した方式だ。

 

中国のBOEはIT用8世代OLEDラインをLTPO TFT方式で準備している。BOEは、酸化物技術に弱点があるため、製造コストが比較的高いLTPO TFTを選択した。BOEの6世代OLEDラインもLTPS(LTPO) TFTを使用している。

 

現在までIT第8世代OLED投資を実施している企業はサムスンディスプレイとBOEの2社である。主要顧客企業の立場からすると、パネルメーカーごとにTFT方式が異なると問題が発生する可能性がある。酸化物TFTとLTPO TFTはそれぞれ低消費電力と高速駆動に強みがあるため、顧客の立場で完成品のコンセプトをそれぞれ異なって設定し、モデル別のパネルメーカーを1社に決めなければならない状況も排除できない。

 

2つのパネルメーカーの蒸着装置メーカーも異なる。サムスンディスプレイはキヤノントッキ、BOEはまず決定した1段階の投資については、韓国のSUNICシステムを選択した。LGディスプレイはまだIT用8世代OLEDの投資決定を下していない。