Visionox、IT向け第8世代OLEDの第1段階投資はFMM方式のみ採用の見通し


2025年2月12日 The Elec

 

「非FMM(ViP)方式」は第1段階投資から除外か…歩留まりの低さが課題

第1段階でのFMM蒸着装置の発注も1台にとどまる可能性

 

VisionoxはIT向け第8世代有機発光ダイオード(OLED)の第1段階生産ラインをファインメタルマスク(FMM)方式で構築する見通しだ。

同社が強調していた「非FMM(ViP)」技術の採用は、第1段階の投資では期待できない状況となっている。

 

3月12日、複数の業界関係者によると、Visionoxは最近、第8世代OLED「V5」生産ラインの第1段階投資にViP方式を含めるのが難しいと判断したことが分かった。歩留まり(生産効率)が低いためだ。

 

Visionoxは昨年8月、第8世代ガラス基板を基準に月産3万2000枚(32K)の規模でV5ラインを構築すると発表していた。当時、ViP技術をアピールしていたものの、どの程度の規模でViPラインを構築するのかは明らかにしていなかった。

 

現在、V5の第1段階投資はFMM方式の蒸着装置1台分に相当する月産8000枚(8K)規模で進める方針とされている。業界では、Visionoxが第1段階と第2段階の投資をそれぞれ月産1万6000枚(16K)規模で進めるとの予測もあったが、今回の計画はその半分にとどまる可能性が高い。

 

VisionoxがFMM方式の蒸着装置1台分(月産8K)にとどめる理由は、需要の不確実性にある。同社よりも規模が大きく、すでにAppleのサプライチェーンに入っているBOEでさえ、IT向け第8世代OLEDの市場需要を確信できていない状況だ。

 

FMM方式の蒸着装置を月産8K規模で導入すると、経済性が低下する可能性がある。これは、蒸着工程の前工程である薄膜トランジスタ(TFT)工程は、設備の特性上、最低でも月産16K規模で構築する必要があるためだ。つまり、蒸着装置を月産8K規模で導入しても、TFT工程は必然的に月産16K規模で整備されるため、投資額全体が単純に半減するわけではない。

 

ある業界関係者は、「第1段階の投資を蒸着装置ベースで月産8K規模にとどめると、確かに経済性は落ちる」としながらも、「Visionoxは将来的な減価償却まで考慮しているようだ」と分析した。設備の稼働率が低ければ、そのまま損失につながる可能性があるという意味だ。

 

Visionoxは現在、国内外の装置メーカーに対し、来年上半期に設備を導入できるかどうかを確認していると伝えられている。来年上半期に設備を導入するためには、今年上半期中に装置メーカーを選定し、発注を行う必要がある。早ければ今月中にも最終決定が下される可能性がある。

 

市場調査会社UBIリサーチは先月開催した独自イベントで、「VisionoxはIT向け第8世代OLEDラインへの投資を決定したものの、政府との資金調達交渉が円滑に進んでおらず、高額な設備(蒸着装置など)の予約金を支払えないなど、投資の執行に苦戦している」と指摘した。また、UBIリサーチは、FMM方式の蒸着装置について、「最優先交渉権は韓国のSunic Systems(선익시스템)が持つと予想されるが、日本のCanon Tokki(キャノントッキ)の可能性もある」と分析している。

 

サムスンディスプレイとBOEは、どちらもIT向け第8世代OLEDラインをFMM(ファインメタルマスク)方式で構築している。サムスンディスプレイの投資規模は月産15K、BOEは月産32Kを計画している。BOEはすでに第1段階として月産16K分の設備を発注したが、第2段階の月産16K分の設備はまだ発注していない。現在、Sunic Systems(선익시스템)がBOE向けに製造している蒸着装置は、5月中旬から下旬にBOEのB16ラインに導入される予定だ。

 

Sunic Systemsは11日、25日に開催される定時株主総会において、発行済株式総数を5000万株から1億株に増加し、転換社債(CB)の発行限度額を500億ウォンから1500億ウォンに拡大するための定款変更を行うと発表した。また、中間配当制度も導入する。

 

業界では以前から、Visionoxが月産32Kを計画しているV5ラインのうち、4分の1にあたる月産8K分をViP方式で構築する可能性があるとの見方があった。この観測は今も続いている。

ViP方式は現時点で量産が難しいとされているが、Visionoxとしては投資の大義名分となった技術を簡単に放棄できないからだ。なお、VisionoxはLCDラインを持たず、OLEDラインのみを運営している。

 

ViP方式OLEDは露光(リソグラフィ)工程を使用する。そのため、理論上はFMM方式よりも開口率(ピクセル内で光が透過する割合)が高く、効率も向上すると考えられている。

しかし、量産性はまだ検証されていない。

 

ViP方式では、赤(R)の材料を蒸着後に露光し、次に緑(G)の材料を蒸着後に露光、最後に青(B)の材料を蒸着後に露光するという方法でRGB OLEDを形成する。ViP方式には、FMM方式と比べてシャドー効果(マスクの構造などにより、サブピクセルが正確な位置に蒸着されない現象)が少ないという期待もあった。しかし、ViP方式でもRGBサブピクセルを蒸着・パターニングする際のシャドー効果が依然として課題となっており、今後の技術的な改善が求められている。