LGディスプレイ、第3四半期からIT OLEDラインでiPhone向けOLEDの生産を推進


2025年2月27日 The Elec

 

LGディスプレイは、第3四半期からIT製品向け有機EL(OLED)ラインでiPhone向けOLEDの生産を開始する計画を立てていることが分かった。当初予定していた年末の生産開始よりも、スケジュールをやや前倒しする形となる。

 

27日の業界関係者によると、LGディスプレイは現在、AppleのiPad向けOLEDを量産しているIT製品向けOLEDラインの一部を活用し、iPhone向けOLEDの併用生産を進める準備を進めている。これは、OLED iPad Proの販売不振により、IT OLEDラインの稼働率が低下したことが背景にある。

 

LGディスプレイは、6世代ガラス基板(G6)を使用する月産1万5000枚(15K)のIT OLEDラインのうち、5000枚(5K)分をiPhone向けOLEDの生産に充てる計画だ。これにより、ライン全体の稼働率向上と、iPhone向けOLEDの出荷量増加を見込んでいる。

 

また、LGディスプレイはIT OLEDラインでのiPhone向けOLED生産に必要な設備を3月までに搬入し、上半期中に設置(セットアップ)を完了する計画とされる。一部の設備はすでに搬入済みであり、早ければ第3四半期から量産稼働が始まる可能性がある。

 

このラインでは、2025年下半期に発売予定のAppleの「iPhone 17」向けOLEDが主力製品になる見込み。本格的な量産開始前に、Appleの認証を取得する必要がある。

 

LGディスプレイ、IT OLEDラインを活用しiPhone向けOLEDの生産を前倒し

LGディスプレイのIT OLEDラインはハイブリッドOLED(ガラス基板+薄膜封止)を製造する設計となっているため、薄膜トランジスタ(TFT)工程の一部に必要な設備を追加すれば、iPhone向けOLEDを生産できる。一部の工程は省略することも可能だ。

 

iPhone向けOLEDはポリイミド(PI)基板に薄膜封止を適用したフレキシブルOLEDを採用している。LGディスプレイでは、フレキシブルOLEDを「プラスチック(P)OLED」と呼んでいる。

 

年間出荷目標を引き上げ

LGディスプレイは、IT OLEDラインを活用したiPhone向けOLEDの生産開始時期を前倒しすることで、年間出荷目標も従来の7000万台中盤から7000万台後半へと引き上げた。同社は2024年、iPhone向けOLEDを約6000万台中後半出荷していた。

 

iPhone 17シリーズ向けOLED供給計画

LGディスプレイは、2025年下半期に発売予定の「iPhone 17」シリーズ4機種のうち3機種にOLEDを供給するとみられる。一方、サムスンディスプレイは4機種すべてにOLEDを供給する。

 

iPhone 17シリーズでは、初めて全4機種に低温多結晶酸化物(LTPO)TFT技術が採用される。従来、iPhone 16シリーズまでは上位のProラインのみLTPO TFTを使用し、下位の通常モデルには低温多結晶シリコン(LTPS)TFTが採用されていた。

 

LTPO方式のiPhone向けOLEDは、LTPS方式の約2倍の価格となる。

 

BOEの参入は厳しく、サムスンとLGが主導

iPhone 17シリーズのOLED供給は、サムスンディスプレイとLGディスプレイの2社が主力になる見込みだ。これは、中国のBOEがiPhone 16シリーズ向けLTPO OLEDの量産承認をまだ取得できていないためで、現在の状況ではBOEがiPhone 17シリーズ向けOLEDを予定通り供給するのは難しいとされている。

 

iPhone 16e向けOLEDはBOEが主力供給

一方で、Appleが最近発表した廉価版「iPhone 16e」向けOLEDの主要サプライヤーはBOEとなった。残りの供給分は、LGディスプレイとサムスンディスプレイが分担する。

 

iPhone 16eのOLEDには、2022年発売のiPhone 14向けOLEDが再利用される。

 

AppleのiPhone 16e年間出荷目標は約2000万台と推定される。ただし、iPhone 16シリーズの販売が低迷していることから、AppleはiPhone 16eの出荷量が2000万台を超えないよう調整する可能性が高い。これは、市場の食い合い(カニバリゼーション)を最小限に抑えつつ、全体のiPhone販売台数と収益を最大化するための戦略と考えられる。