2025年1月7日 CINNO Research
LG Displayは、今年から新しい構造を持つ白色(W)有機発光ダイオード(OLED)パネルの量産を開始する計画を発表しました。この新型W-OLEDは輝度を大幅に向上させることができるとされています。現在、中国広州のOLED工場で四重積層W-OLEDの量産準備が完了しているとのことです。
四重積層W-OLEDの特徴と構造
新型W-OLEDの最大の特徴は、発光層の構造が従来の三層(トリプル積層)から四層(クアドラプル積層)に拡張された点です。
従来の三層構造
発光層は、青(B)-緑(G)、黄緑(YG)、赤(R)-青(B)という組み合わせで構成されていました。
新しい四層構造
青(B)-緑(G)-青(B)-赤(R)の順に発光層を積層します。従来の三層構造で一つの層として扱われていた緑(G)、黄緑(YG)、赤(R)が、それぞれ独立した層として分離されています。
この構造の変化により、各層が生成する光が重なり合い、発光量が増加し、結果として輝度が向上します。
用途と影響
LG Displayは、まずこの四重積層技術をテレビパネル分野に適用する予定です。これにより、これまで液晶ディスプレイ(LCD)テレビと比べて輝度で劣っていたOLEDテレビの性能が向上すると期待されています。
技術的背景と進展
従来の三層W-OLEDは、黄緑(YG)と赤(R)の組み合わせを調整することで性能を向上させ、寿命や特性を改善してきました。また、重水素置換技術やマイクロレンズアレイ(MLA)を活用して製品の性能を高めてきました。しかし、新型四層W-OLEDはMLA技術を採用しないと見られています。
一方、Samsung Displayも五重積層量子ドット(QD)-OLEDパネルの投入を予定しています。従来の四重積層QD-OLED構造に緑(G)を追加し、青(B)-青(B)-緑(G)-青(B)-緑(G)の順に積層することで輝度をさらに向上させる技術です。
市場動向
LG Displayの強み
OLEDテレビ市場では、LG Displayが出荷量でリードしており、四重積層W-OLEDの導入によってさらに競争力を高める可能性があります。
Samsung Displayの戦略
一方、Samsung DisplayはOLEDディスプレイ分野で優位性を持ち、特に27インチモニター市場に注力しています。すでにMSIが27インチディスプレイに五重積層QD-OLED技術を採用することを発表しています。
異なる技術路線
LG DisplayのW-OLEDおよびSamsung DisplayのQD-OLEDは、大型ディスプレイに特化した堆積技術を採用しており、中小型デバイス用の二重積層OLED(Tandem OLED)とは技術的に異なるアプローチを取っています。
大型ディスプレイでは、開放型金属マスク(OMM)を使用し、白光(W-OLED)や青光(QD-OLED)の発光層を3~5層積層した後、W-OLEDはカラーフィルターを、QD-OLEDはQD変換層を使用して色を再現します。一方、中小型OLEDは精密金属マスク(FMM)技術を用い、赤(R)、緑(G)、青(B)を密接に配置し、発光層を積層することで性能を向上させています。
LG DisplayとSamsung Displayがそれぞれ異なる製品分野で積層技術を展開することで、OLED市場はさらなる発展を遂げることが期待されています。