2024.11.18 The Elec
CSOTの趙俊(ジャオ・ジュン)CEOは、16日に中国広州で開催された自社カンファレンス「DTC 2024」で、「(TVパネル市場で)有機EL(OLED)の可能性が減少している」と述べました。
趙CEOは、「OLEDパネルはより優れた製品と評価されているものの、TVパネル市場では液晶ディスプレイ(LCD)が長期間市場を独占しており、LCDの画質も改善されている」と説明しました。また、「TVメーカーはプレミアム製品のラインアップをミニLEDなどLCD中心で構成しており、(TVパネル市場での)OLEDの可能性が減少している」と付け加えました。
現在、世界のTV出荷台数は約2億台前後で、このうちOLED製品の割合は約3%、約600万台にとどまっています。一方で、残りの97%、2億台以上はLCD製品が占めています。
CSOTの親会社であるTCLは主要なTVメーカーの中で唯一、OLED TVラインアップを持たない企業です。同社はTVの大型化の流れに合わせ、ミニLEDなどのプレミアムLCD TVラインアップを強化しています。
趙俊CEO、CSOTのLCD品質向上を強調
趙俊CEOは、CSOTのLCD品質の向上について次のように語りました。「6年間の努力の末、CSOTのLCDパネルが米国の電子製品評価メディア『Rtings』の評価で8.8点を獲得し、今年1位となりました。高品質なパネルは顧客(TVメーカー)のRtings評価にも良い影響を与えることができます」。
CSOTはこの日、85インチの4K WHVA LCDの新製品を展示しました。同社は「世界で最も画質の良いLCD TVパネル」と自負しています。この製品には視野角を改善するためにVA(垂直配向)技術が採用され、仕様としては150Hz、視野角178度などが特徴です。このパネルは、TCLやサムスン電子が来年発売する新製品のTVに採用される予定です。
また、CSOTがLGディスプレイから広州LCD工場を最終的に買収すれば、もう一つの視野角改善技術であるIPS(In Plane Switching)方式のLCD TVパネルを製造することが可能になります。これにより、CSOTのLCD TVパネル事業には新たな機会が開かれ、顧客層や市場の多様化を図ることができます。これまで、IPS方式のLCD TVパネルは主にLGディスプレイとBOEが供給してきました。
CSOTのインクジェットプリンティングOLEDライン、モニター市場をターゲットに拡大計画
CSOTは、10日に量産を開始したインクジェットプリンティングOLEDラインが、当面はモニターなど中型OLED市場をターゲットにしていることを明らかにしました。同社は現在、5.5世代(1300x1500mm)のインクジェットプリンティングOLEDラインで製品を拡大した後、来年末までに8.5世代(2200x2500mm)のインクジェットプリンティングOLED「T8プロジェクト」の推進可否を決定する予定です。このT8プロジェクトへの投資が実現すれば、CSOTもテレビ用大型OLEDの生産が可能となります。
CSOTのインクジェットプリンティングOLEDラインアップの拡大は、ファインメタルマスク(FMM)方式によるIT向け8世代OLED投資の可否とも密接に関連しています。現在、IT向け8世代OLEDに投資しているサムスンディスプレイとBOEの2社は、FMM方式でラインを構成しています。もしCSOTのインクジェットプリンティングOLEDが市場で良い評価を得られなければ、CSOTも最終的にはFMM方式でIT向け8世代OLEDラインを構築せざるを得なくなる可能性があります。ただし、最近の予測では、IT製品向けOLED需要が期待ほど早く拡大しないとされており、CSOTは市場の動向を見極めた上で技術方式や投資時期を決定すると見られています。
中国TV市場の新たな動き―シャオミとファーウェイの台頭
趙俊CEOが述べたように、TCLやハイセンスといった中国の主要TVメーカーがミニLEDなどLCD製品を推進する中で、中国TV市場では新たな変化が起きています。それは、IoTを基盤としたエコシステムを通じて、TV市場シェアを少しずつ拡大しているシャオミとファーウェイです。
スマートフォン事業を展開しているシャオミとファーウェイは、室内でさまざまなIoTソリューションを提供する事業を並行して行いながら、TVの出荷量も増加させています。スマートフォン、TV、その他の家電製品がすべて連携するIoTエコシステムを提供できる点が強みです。一方で、シャオミやファーウェイと比べると、TCLやハイセンスはIoT基盤のエコシステムを持っていません。
業界関係者は「中国市場ではGoogleエコシステムが排除されており、Appleのエコシステムも力を発揮できない」とし、「中国TV市場では国内メーカーのシェアが95%以上を占め、彼らの間での競争も激しい」と述べました。また、別の関係者は「IoT基盤のエコシステムがある企業とない企業の戦略は、当然異ならざるを得ない」とコメントしました。