2025.02.10 The Elec
BOEが第2四半期にAppleのiPhone向けに供給する有機EL(OLED)パネルの数量が極めて少ない状態であることが、10日に明らかになった。主な原因は品質問題だ。BOEが十分な供給量を確保できない場合、サムスンディスプレイ(Samsung Display)とLGディスプレイ(LG Display)がその分の受注を獲得し、恩恵を受ける可能性が高い。
品質問題が発生したのはiPhone 15・16の標準モデル向けOLED
BOEで品質問題が発生したのは、iPhone 15(2023年モデル)とiPhone 16(2024年モデル)の標準ラインアップ向け低温多結晶シリコン(LTPS)TFT OLEDである。BOEはiPhone Proシリーズ向けの低温多結晶酸化物(LTPO)TFT OLEDの量産認証をまだ取得できていない。LTPO OLEDはLTPS OLEDよりも高性能なハイエンドモデル向けであり、価格も約2倍高い。
BOEの品質問題解決には「最低6週間」かかる見込み
業界関係者によると、BOEが今回のOLED品質問題を解決するには最低6週間はかかる見通しだという。BOEの2023年のiPhone向けOLED出荷量は約4000万台と推定されているが、iPhone 15・16向けのOLED供給量はわずか700万~800万台程度にとどまったとされる。残りの3000万台以上は、iPhone 14(2022年モデル)など、さらに古い「レガシーモデル」向けに出荷されたものだった。
昨年の韓国パネルメーカーによるiPhone 15・16向けOLED出荷量推定値
昨年、韓国のパネルメーカーがAppleのiPhone 15・16向けに出荷したOLEDの推定量は、
・サムスンディスプレイ:約1億台
・LGディスプレイ:約6000万台前半
iPhone 15・16向けのOLEDは仕様の変化が小さいため、BOEが現在直面しているiPhone 15・16向けOLEDの品質問題は共通の原因による可能性がある。
BOEはiPhone SE4向けOLEDの安定供給を継続
一方で、BOEはAppleが近日発売する廉価モデル「iPhone SE4」向けのOLEDを、昨年末から安定して量産してきた。iPhone SE4には、iPhone 13(2021年モデル)・iPhone 14(2022年モデル)で使用されたOLEDが再び採用される。
iPhone SE4のOLEDの主要供給メーカー(ファーストベンダー)はBOEであり、その供給比率は50~70%と推定される。セカンドベンダーはLGディスプレイ、サードベンダーはサムスンディスプレイである。Appleは今年、iPhone SE4を約2000万台出荷する計画を立てている。
BOEのiPhone 15・16向けOLED量産遅延でサムスンD・LGDが恩恵を受ける可能性
BOEがiPhone 15・16向けOLEDの量産に支障をきたしていることで、サムスンディスプレイとLGディスプレイが一部の受注を獲得する可能性がある。ただし、LGディスプレイはiPhone 15・16シリーズではProモデル向けのLTPO OLEDのみを供給しているため、BOEが担当する予定だったLTPS OLEDの供給は、サムスンディスプレイに移行する可能性が高い。
iPhone 17シリーズ、初めて全モデルにLTPO OLEDを採用
今年後半に発売予定のiPhone 17シリーズは、初めて全4モデルにLTPO OLEDを採用する。そのため、サムスンディスプレイとLGディスプレイの2社が、このOLEDの大部分を供給する可能性が高い。BOEは昨年モデルのiPhone 16 Pro向けLTPO OLEDの量産承認をまだ取得できておらず、LTPS OLEDの生産にも支障をきたしているためだ。iPhone 15と16は部品設計の基準が似ていたが、iPhone 17では大幅な変更が加えられるとみられている。
2023年のiPhone向けOLED出荷量推定値
昨年のiPhone向けOLEDの年間出荷量は約2億3000万~2億4000万台と推定される。その内訳は以下の通り:
サムスンディスプレイ:合計1億2000万~1億3000万台
・LTPS OLED:7500万~8500万台
・LTPO OLED:4500万~5000万台
LGディスプレイ:合計6000万台中後半
・LTPS OLED:500万~600万台
・LTPO OLED:6000万台前半
BOE:LTPS OLEDのみ 約4000万台
この数値からも、BOEのLTPO OLED供給はまだ実現していないことが分かる。