2024年11月25日 The Elec
サムスンディスプレイ、A2ラインでR&D用...「非FMM方式OLED」の量産性を検討か
米国Applied Materials(AMAT)がサムスンディスプレイに非FMM(ファインメタルマスク)方式の垂直蒸着機を供給することが明らかになった。AMATは、自社技術が第8世代有機EL(OLED)に対応可能だと主張しているが、サムスンディスプレイはまず量産適用の可能性を検討する見込みだ。候補としては、20~30インチクラスのOLEDや左右に長い車載OLEDのように、既存のFMM方式では量産が困難な分野が挙げられている。
AMATは21日(現地時間)、「サムスンディスプレイに『MAX OLEDソリューション』を供給する」と発表した。このソリューションは、従来のFMMを使用せず、特別に設計されたプロセスを通じてRGB(赤・緑・青)OLEDサブピクセルをパターニングする技術だと説明されている。
AMATの「MAX OLEDソリューション」は、業界で「eLEAP」(JDIの技術名)と呼ばれる技術に類似している。例えば、JDIのeLEAPやVisionoxのViPは、FMMを使用せず露光プロセスでRGB OLEDの発光層と共通層を形成する技術である。この方法を採用することで、従来のFMM方式より高解像度ディスプレイの実現が可能となり、開口率を向上させることができる。また、RGB各色の材料セット構成を個別に設計することも可能だ。
今回、AMATの装置はサムスンディスプレイのA2 5.5世代ラインに導入される。AMATは同技術が第8世代まで対応可能と説明しているが、サムスンディスプレイはまず量産性を評価するとみられている。JDIのeLEAPやVisionoxのViPもまだ量産性が検証されていない状況だ。
AMATもプレスリリースで「サムスンディスプレイが(MAX OLEDソリューション)アルファシステムを導入し、この新技術を評価する予定」と明らかにしている。このアルファシステムは、初期テスト用の装置やシステムを指している。今回供給される装置は1台とされている。
新たな市場を狙う可能性
業界では、サムスンディスプレイが新しいOLED市場を狙って非FMM方式の適用可能性を検討するという見方が出ている。特に、20~30インチクラスの中型OLEDや左右に長い車載OLEDが注目されている。これらの製品は、既存のFMM方式での対応が難しいとされている分野だ。
将来的な影響
非FMM方式OLEDは、量産性が確立された場合でも露光プロセスの適用拡大により製造コストが上昇する可能性がある。そのため、小ロット・多品種生産に適したニッチ市場を狙う可能性が高い。一方で、量産性が確立されれば、現行のFMM方式が支配する中小型OLED市場に変化をもたらす可能性もある。
サムスンディスプレイをはじめ、JDI、Visionox、SELなども非FMM方式OLEDの研究開発に関心を寄せている。特に、サムスンディスプレイは今年4月、米国Orthogonalから非FMM方式RGB OLEDに関連する米国特許5件を取得しており、この動きは将来の特許紛争リスクを低減するためと考えられている。