IT向けのOLED製造の動向


Visionox(ビジョノックス)の進捗と課題

 

ViP技術と外的要因

ビジョノックスが注力する「ViP」方式OLED技術は、従来のFMM方式と比べて開口率や効率の面で優位性があるとされる一方、量産性がまだ検証段階にあります。また、2024年1月に発足するトランプ第2期政権による対中関税政策の影響や、資金調達の遅延リスクなど、多くの不確実な要素が投資計画に影響を与える見込みです。特に中国産パネルに関税が課される場合の影響が懸念される一方、選択的関税適用が実現すればビジョノックスにとっては好機となる可能性があります。

 

V5ライン設備選定と投資計画

ビジョノックスは2024年第1~第2四半期に、第8世代OLED V5ラインの設備業者を選定する予定であり、初期設備搬入は2026年上半期に見込まれています。V5ラインは月産32K規模で計画されていますが、初期段階ではその半分(16K)の設備が導入される予定です。総投資額は550億元で、そのうちビジョノックスが負担するのは110億元とされますが、資金調達の遅れが設備発注のスケジュールに影響を与える懸念が出ています。

 

ViPとFMM方式の併用可能性

V5ラインでは、ViP方式を月8K規模で導入する計画がある一方で、残りはFMM方式で構成される可能性が高いとされています。ViP技術の量産が困難と判断された場合、ラインの一部を大型ホワイトOLED方式に転換する可能性もあり、地元政府からの支援を引き出すために差別化技術のアピールが続けられています。

 

サムスンディスプレイのベトナム投資計画

 

サムスンディスプレイは、ベトナムのバクニン省で新プロジェクトを推進しており、第8.6世代OLEDバックエンドモジュール加工ラインの設立を計画しています。長期的な投資額は18億ドルと見積もられ、地元政府との協力を通じてプロジェクトが進行中です。これにより、ベトナムがサムスンの世界最大のディスプレイモジュール生産拠点になることが期待されています。また、同社はOLEDの前工程を韓国で、後工程をベトナムで行う方針を取っています。

業界全体の動向と技術選択の違い

 

酸化物TFT技術とLTPO方式の競争

サムスンディスプレイは、第8世代OLEDラインに酸化物TFTを採用し、低消費電力性能を強調しています。一方、BOEはLTPO TFT方式を採用し、高速駆動性能を重視しています。このような技術選択の違いが、顧客企業の製品戦略やサプライチェーン管理に影響を与える可能性があります。顧客側は各メーカーごとに異なる技術仕様に対応する必要があり、完成品のモデルごとにパネル供給先を選定する課題が浮上しています。

 

主要メーカーの動向

現在、サムスンディスプレイとBOEの2社がIT向け第8世代OLED投資を進めていますが、それぞれ蒸着装置の供給元も異なっています。サムスンディスプレイはキヤノントッキの装置を採用しており、BOEはSUNICシステムを選定しました。LGディスプレイはまだ8世代OLEDの投資決定を行っていませんが、今後の動向が注目されます。

 

まとめ

ビジョノックス、サムスンディスプレイ、BOEなど主要パネルメーカーは、それぞれ異なる技術や投資戦略を進めています。特に新技術の量産性や外的要因の影響が大きな変数となる中、各企業が顧客や地元政府との関係を強化しながら市場シェアを拡大するための競争が激化しています。