2020年4月27日 UBIリサーチ
コロナウイルス禍とサムスンディスプレイのQNED事業推進の理由で、今後のTV用OLED発光材市場が大幅に縮小される見通しだ。
UBIリサーチの「2020年発光材料報告書」によると、発光材料縮小の理由として、1番目はコロナウイルスによってLGディスプレーのOLEDパネルの生産と供給に支障の発生があり、2番目は下半期から本格化する世界景気低迷による高価のTV需要減少である。加えて、サムスンディスプレイが推進してきたQD-OLED事業がQNED事業に急旋回する可能性が非常に高くなったからだ。
まずLGディスプレーのOLEDパネルの生産面を見ると、広州工場ではまだパネル出荷が行われていない。初期生産計画は2019年7月から広州工場でパネル生産を開始すると知られていたがパネルの寿命に問題があることが分かって遅延されてきた。パネルの信頼性は製造装置や材料特性に主に起因するが、エンジニアの熟練度と作業環境などによっても左右される非常に敏感な要素である。坡州のエンジニアは2013年から始まったOLEDパネルの生産に非常に熟練しているが、中国のエンジニアは今回が初めて経験する段階であるため、パネルに問題が発生したときは韓国のエンジニアの助けが切実に必要である。しかし、コロナウイルスによって、熟練した技術者の中国の入国に多くの支障が発生しており、問題の解決に困難が多い。加えて、生産されたパネルは内部テストで検証された製品を顧客に送って品質承認を受けなければならが、航空便が制約されておりパネルの空輸に困難がある。特に最近では主要市場である日本でコロナウイルスが拡大しており、ソニーもOLED TV販路が閉ざされている状態である。
UBIリサーチが今年発行した「2020年OLED報告書」では、2020年OLED TV市場を490万台と予想したが、今回のコロナウイルスの事態を反映した修正予測値は360万台である。2021年以降は景気回復鈍化によってOLED TV市場も回復が遅れると予測している。
サムスンディスプレイが開発しているQNEDとQD-OLEDと構造の違いは、blue OLED層の代わりにnano rod LEDが使用されるのである。Backplaneのoxide TFTとquantum dot層は同じ構造である。 QNEDはすでに製品開発の完成度が非常に高く、1年後には量産投資決定が行われる予定であるため、サムスンディスプレイはQD-OLED投資計画をQNEDに変更する可能性が非常に高い。
LGディスプレーが生産しているWRGB OLEDとサムスンディスプレイが事業推進中のQDOLEDは、OLEDの利点である高コントラスト比と躍動感のある色を示すことができる長所があるが、輝度向上には限界がある。有機物を使用するので現在の技術としては1,000nit程度が最大値である。
これに比べてQNEDは無機物であるLEDを発光に使用するため、OLEDに比べると5〜10倍高い輝度を出すことができる。もちろんOLEDが持っているとコントラスト比と躍動感のある色の表現も可能である。
サムスン電子は高輝度でHDR特性の良いTVを戦略的に販売している企業であるため、輝度が低いQD-OLEDの使用には非常に消極的であるが、輝度を上げることができるQNED使用は積極的だ。
これらの理由から、サムスンディスプレイはQD-OLED投資を30Kのみ進行してQNED開発状況に応じて、残りの投資はすべてQNEDに切り替えることを予想されるので、QD-OLED用発光材料市場は30Kの製造に必要な程度に成長が止まるように見える。
サムスンディスプレイとサムスン電子のニーズが一致する製品であるため、商品化への意欲が最高に高いディスプレイである。QNEDが市場に出るとOLED TVは非常に大きな打撃を受けると予想されており、また、最近、中国のパネルメーカーが中心に推進されているmini-LED LCD TV事業にも影響を受けるだろう。