ポーランドのテクノロジー企業のNoctilucaがOLEDディスプレイ材料技術の進展を示す


ポーランドのテクノロジー企業ノクティルカ(Noctiluca)は、OLEDディスプレイ技術において大きな進展を遂げたと発表しました。同社が開発した新しい独自素材「NCEIL-4」は、韓国での実験室テストにおいて、青色画素の性能に著しい改善をもたらしたとされています。NCEIL-4は、青色画素の寿命を最大で15倍に延ばすと同時に、消費電力を削減する能力を示しており、長年OLEDディスプレイメーカーを悩ませてきた2つの主要課題に対する解決策として注目されています。

 

OLED技術において、青色発光体は長らく開発の難関とされてきました。業界全体で多くの研究が重ねられてきたにもかかわらず、完全に最適化された青色発光材料は未だに実現されておらず、1990年代に遡る効率の悪い第1世代技術への依存が続いています。

 

青色画素は、ディスプレイが発する光の大部分を占める重要な要素であり、その性能は映像の全体的な品質、色の鮮やかさ、明るさ、そしてOLED画面の耐久性に大きな影響を与えます。

 

ノクティルカの解決アプローチは、従来とは異なるものでした。同社の研究チームは、単に新しい青色発光体を開発するのではなく、OLEDスタック全体の構造を改善する方法を模索しました。

 

その結果生まれたのがNCEIL-4であり、これは電子注入材料(EIL)として、現在広く使用されているLiq(8-キノリノラトリチウム)と比較して大幅な性能向上をもたらすものです。実験室でのテストでは、電子注入層としてNCEIL-4を使用することでデバイスの寿命が5倍に延び、さらに電子輸送層にドーピングすることで寿命が15倍にまで延長されることが確認されました。

 

NCEIL-4は、デバイスの寿命を延ばすだけでなく、外部量子効率と電流効率の向上、駆動電圧の低下、電荷注入障壁の軽減といった効果もあり、全体として大幅な省エネルギーを実現しています。しかも、これらの性能向上はデバイスのスペクトル特性に影響を与えることなく達成されています。

 

また、NCEIL-4はその汎用性の高さも特筆されており、物理蒸着法(PVD)とインクジェット印刷の両方の製造方式に対応しているため、さまざまな製造プロセスとの互換性を備えています。

 

さらに、NCEIL-4は、従来のOLEDディスプレイ用途を超えて、将来的には有機太陽電池(OPV)や有機電界効果トランジスタ(OFET)への応用も期待されています。これによりエネルギー損失を抑制し、電子輸送を改善したり、デバイスの性能やスイッチング特性を向上させたりする可能性があるとされています。

 

会社の履歴

ポーランドのトルンに設立されたノクティルカ(Noctiluca)は、創業以来大きな変革を遂げてきました。同社は2022年4月にワルシャワ証券取引所の新興企業向け市場「NewConnect」に上場し、2024年12月にはメイン市場への移行を果たしました。近年では、独自のOLED発光体の開発に特化したテクノロジー企業から、「未来の製品」のための先進的な化学化合物を産業規模で開発・製造する企業へと進化を遂げています。

 

ノクティルカは事業規模を大幅に拡大し、トルンに最先端の研究所を設立したほか、韓国にも研究開発拠点を開設しました。さらに、ドイツの主要な研究機関との協力体制を強化し、台湾の代表的なハイテク産業振興機関であるITRI(工業技術研究院)との共同プロジェクトも始動しています。

 

商業面では、同社は大きな進展を見せており、世界のディスプレイメーカー上位10社のうち8社との関係構築に成功しています。また、顧客層の多様化にも取り組み、スイスの大手腕時計メーカー、中国最大の通信機器メーカー、アメリカの大手消費者向け電子機器企業とパートナーシップを結んでいます。

 

ノクティルカは、ポーランドおよび欧州におけるOLED技術の中心的存在となることを目指し、大きなビジョンを掲げています。同社の戦略は、OLED用化学材料に関するポーランドおよび欧州の研究活動を統合し、ポーランド国内におけるエンジニアリングとデバイス物理の能力を拡充することであり、そのために今年から200万〜300万ドルの投資を計画しています。

 

さらに、同社はディスプレイ以外のOLED用途にも目を向けており、照明、文書のセキュリティ対策、ゲーミングハードウェアの製造、包装印刷といった分野の顧客とも連携を進めています。