2025年3月21日 Display Daily
市場調査会社カウンターポイント(Counterpoint)の最新調査によると、2024年の世界のバーチャルリアリティ(VR)ヘッドセット市場は3年連続で減少した。
出荷台数は前年同期比(YoY)で12%減少し、引き続き消費者需要の低迷、ハードウェアの制約、魅力的なコンテンツの不足が重荷となった。
不振が続く中でも、Metaが市場を独占
2024年のVR市場が低迷を続ける中でも、Metaは依然として市場を独占し、全体の出荷台数の77%を確保した。特に第4四半期には、より手頃な価格の「Quest 3S」の発売により、Metaのシェアは84%に上昇した。
一方、SonyのPlayStation VR2は、ホリデーシーズン中の積極的なプロモーションが奏功し、第4四半期の出荷台数の9%を獲得。AppleのVision Proは、初期の熱狂が落ち着いた後に失速し、四半期ベース(QoQ)で43%の落ち込みを記録した。
エンタープライズ市場は明るい兆し
カウンターポイントによると、エンタープライズ市場では明るい兆しが見られ、Vision Proのビジネス向け販売が年末にかけて伸びを示した。
中国OEMのPicoとDPVRもエンタープライズ需要の恩恵を受ける
中国のOEMメーカーであるPicoとDPVRもエンタープライズ需要の拡大で恩恵を受けた。Picoの出荷台数は、消費者向けよりもエンタープライズ向けが上回り、DPVRは2024年に前年比30%以上の成長を遂げた。両社は教育、医療、ロケーションベースのエンターテインメントなどの分野で機会を活用した。
VR市場は今後2年間も逆風が続く見通し
カウンターポイントの予測によると、今後2年間、VR市場は引き続き厳しい状況が続く見込みだ。エンターテインメント以外のコンテンツの不足、ヘッドセットの重量と性能のトレードオフ、眼精疲労などの課題が依然として普及拡大の大きな障壁となっている。
空間コンピューティングには将来性があるものの、ハードウェア設計とコンテンツ開発の飛躍的な進展がVR市場の活性化には不可欠となる。
AR市場も低迷、スマートグラス出荷台数は前年比8%減少
拡張現実(AR)市場でも、2024年のARスマートグラスの世界出荷台数は前年比8%減少した。
中でもバードバス方式のビデオ視聴用ARグラスは27%成長し、引き続き市場の主力カテゴリとなったが、INMOのメガネのようなウェーブガイド方式の製品は、消費者需要の減退により前年比67%の急減を記録した。
カウンターポイントは、AI統合によるARグラス市場の急成長を予測
カウンターポイントは、AI機能を統合したARグラスの普及により、2026年までに年平均30%以上の成長を遂げると予測している。
生成AI技術の成熟に伴い、ますます多くの企業がARグラスをAI体験の提供に不可欠なツールと位置付けている。Googleが予定しているAndroid XR OSのリリースは、大規模AIモデルとの統合と多様なAndroidアプリの活用により、新たなソフトウェアの可能性を引き出すことが期待されている。
VR市場の厳しい状況が続く一方、業界全体は回復の兆し
短期的にはVR市場の見通しは依然として厳しいものの、AR+AI技術の革新とエンタープライズ需要の再燃が、業界全体を回復軌道に乗せる見込みだ。
カウンターポイントの分析によると、次世代の没入型テクノロジー(Immersive Tech)の成功は、主要プレイヤーがユースケースを拡大し、ハードウェアの洗練とAIとXR体験の相乗効果をいかに活用できるかにかかっている。