VisionoxのIT向けの第8世代製造装置の選定時期は2025年1四半期から


2024.12.05 The Elec

 

Visionox(ビジョノックス)が差別化要素として強調している「非ファインメタルマスク(FMM)」方式の「ViP」技術の量産性がまだ検証されていないことに加え、来年1月にアメリカで発足するトランプ第2期政権による不確実性や、ビジョノックスの資金調達能力など、多くの変数が関わっています。

 

12月5日、複数のディスプレイ設備業界関係者によると、ビジョノックスは早ければ2024年の第1四半期から第2四半期にかけて、IT第8世代OLED V5ラインの設備業者を選定する見通しです。この関係者は、ビジョノックスと設備供給に関する協議を進めている企業に所属しています。

 

現在、ビジョノックスは複数の設備業者と仕様や価格を交渉中で、一部の設備は有利な立場にありつつも、形勢逆転を狙う業者も存在します。第1段階のV5ライン設備搬入は2026年上半期が予想されており、ガラス基板投入基準で月32,000枚(32K)規模のうち、半分の月16Kが対象です。2026年上半期の搬入には、2025年上半期に設備業者を選定し、発注を行う必要があります。なお、ビジョノックスは今年9月にV5ラインの起工式を行いましたが、まだ工場の建設には着手していません。

 

ビジョノックスが注目するViP方式OLEDラインの投資規模は依然として不透明です。韓国国内では、ビジョノックスが月32K規模のV5ラインのうち、4分の1にあたる月8K以上をViPラインとして構成する可能性が高いと見られています。また、ビジョノックスは今月初めにViPに関する品評会も開催予定です。業界関係者の一人は、「ビジョノックスはV5投資を強く推進しており、ViPラインも少なくとも一部含まれるだろう」と述べています。

 

一部では、ビジョノックスがV5ラインの一部をViP方式で構成し、量産が困難と判断した場合、そのラインを大型ホワイト(W)OLED方式に転換する可能性があるとの見方も出ています。これは、地方政府からの投資誘致を目指し、差別化技術であるViPをアピールする必要性があることに基づく推測です。

 

 

ViP方式が一部に採用される場合、残りのラインはFMM方式で構成される可能性が高いと見られています。サムスンディスプレイやBOEは、いずれもIT第8世代OLEDラインをFMM方式で構築・投資しています。

 

外的要因の影響

トランプ第2期政権の発足に伴う不確実性も重要な変数です。仮にトランプ大統領が2024年1月の就任後、中国産パネルに関税を課す決定を下した場合、ビジョノックスにも影響が及ぶ可能性があります。ただし、米国政府が世界市場における中国産の割合が高い現状を受け入れ、一部の中国産パネルに選択的に関税を課す場合、ビジョノックスにとってはチャンスとなる可能性があります。

 

資金調達の課題

V5ラインの構築に必要な費用は550億元(約10兆4,000億円)とされており、そのうちビジョノックスが直接負担するのは20%(110億元、約2兆800億円)です。関係者によると、「ビジョノックスは自身が負担する資金調達に苦労しており、問題が解決しなければ設備発注の時期が遅れる可能性がある」とのことです。

 

関係企業の動向

9月の起工式には、アプライドマテリアルズ(AMAT)、ヤス、キャノントッキ、サンイクシステムなどの蒸着装置メーカーの関係者が出席しました。AMATとヤスはViP方式の蒸着装置、キャノントッキとサンイクシステムはFMM方式の蒸着装置の納入候補とされています。

 

ViP方式OLEDは露光工程を使用するため、理論的にはFMM方式よりも開口率(ピクセルから光が出る割合)や効率が高いとされています。ただし、量産性がまだ検証段階にあります。

 

一方、BOEはB16ラインの第1段階用設備を2024年初めから順次搬入する計画です。