2025年4月24日 The Elec
LGディスプレイは、昨年の第4四半期に続いて、今年の第1四半期も営業黒字を達成しました。LGディスプレイが2四半期連続で黒字を計上したのは、2022年第1四半期以来、実に3年ぶりのことです。
同社は4月24日に、第1四半期の売上高が6兆653億ウォン、営業利益が335億ウォンだったと発表しました。前年同期と比較して売上は15%増加し、営業損益は黒字に転じました。
この黒字の背景には、為替の好転と顧客企業による在庫積み増しの需要があるとみられています。Appleやサムスン電子などのセットメーカーが、部品や完成品の在庫を増やしたのは、アメリカのドナルド・トランプ前大統領が米国への輸入品に対する関税の再導入を予告していたことが影響していると考えられます。
AppleのiPhone向け有機EL(OLED)ディスプレイの在庫積み増し需要や、サムスン電子およびLG電子によるTV用大型OLEDや大型液晶ディスプレイ(LCD)の在庫確保の動きが、特に大きな要因として挙げられています。
LGディスプレイは、昨年発売されたiPhone 16シリーズのうち、上位機種であるProおよびPro Max向けに、低温多結晶酸化物(LTPO)方式のOLEDのみを量産しています。iPhone 16シリーズ全体の販売は芳しくないものの、ProおよびPro Maxの需要は比較的堅調に推移しています。また、第1四半期に発売された廉価版のiPhone 16e向けOLEDも、LGディスプレイの業績に好影響を与えました。iPhone 16eは毎年発売されるモデルではありません。
OLEDテレビは、主に北米とヨーロッパ市場で販売されており、サムスン電子とLG電子はこれらの市場に向けたOLEDテレビとそのパネルの在庫を早い段階で確保していたと伝えられています。LGディスプレイの大型OLED事業は現在赤字を抱えていますが、出荷量が増加すれば、赤字幅の縮小が見込まれます。
さらに、第1四半期はLGディスプレイが中国・広州のLCD工場でテレビ用LCDパネルを生産した最後の期間でもありました。この工場の運営権は、4月1日付けで中国のCSOTに移管されました。LGディスプレイが最後にこの工場を運営していた期間に、サムスン電子などがテレビ用LCDパネルの在庫を積み増したと推定されています。
LGディスプレイが2025年第1四半期に売上6兆653億ウォンを記録したことを受け、サムスンディスプレイの同四半期の売上にも注目が集まっています。サムスン電子は4月8日に第1四半期の暫定業績を発表しており、サムスンディスプレイの業績推定値は売上5兆8000億〜6兆1000億ウォン、営業利益は4500億〜5000億ウォンと見込まれています。
仮に第1四半期においてサムスンディスプレイの売上がLGディスプレイを下回った場合、これは2021年第2四半期以来、実に15四半期ぶりにLGディスプレイの四半期売上がサムスンディスプレイを上回るということになります。
ただし、たとえ第1四半期にLGディスプレイの売上がサムスンディスプレイを上回ったとしても、今後同様の状況がしばらく続く可能性は低いと見られています。というのも、第2四半期からはLGディスプレイの広州LCD工場の売上が計上されなくなるためです。これまでこの工場による売上は四半期あたり約5000億ウォン、年間で約2兆ウォンにのぼっていました。
また、LGディスプレイが広州LCD工場の売却後に国内に持ち帰ることができる現金の規模についても関心が集まっています。というのも、中国当局は大規模な外貨の国外持ち出しに慎重な姿勢を取っているためです。なお、広州LCD工場の売却金額は2兆2000億ウォンです。
参考までに、サムスンディスプレイは2020年8月に中国・蘇州のLCD工場をCSOTに売却しましたが、その際、国内に現金として持ち帰った金額は売却額全体(当時の為替レートで約1兆2800億ウォン)のうち、32%にあたる3億4100万ドル(約4000億ウォン)でした。残りの7億3900万ドル(約8700億ウォン)はCSOTの株式12%の取得に充てられています。ちなみにこの売却金額10億8000万ドルの内訳は、前工程ライン(SSL)が7億3900万ドル、後工程のモジュールライン(SSM)が3億4100万ドルとなっています。CSOTはサムスンディスプレイから引き継いだ蘇州LCD工場を「T10」、LGディスプレイから引き継いだ広州LCD工場を「T11」と呼んでいます。
一方、サムスンディスプレイは第2四半期にiPhone向けOLEDの供給量をさらに拡大する計画があるとされています。同社はiPhone 16シリーズにおいて、上位モデル(プロおよびプロマックス)向けのLTPO OLEDだけでなく、下位モデル(標準およびプラス)向けの低温多結晶シリコン(LTPS)方式OLED、さらに廉価モデルのiPhone 16e向けOLEDも含めた4種類のOLEDをすべて量産しています。