LGディスプレイ、大型OLEDで「赤色・緑色を独立構成」初めて実現


2025年1月16日 The Elec

 

LGディスプレイは、「大型有機EL(OLED)としては初めて、赤色(R)と緑色(G)を独立構成した4スタック製品を量産する」と発表しました。

 

同日開催された「第4世代OLED技術説明会」において、この新技術が公開されました。第4世代OLEDとは、4スタックのホワイト(W)-OLEDを指します。

 

4スタックW-OLEDの技術的特徴

4スタックW-OLEDは、ガラス基板の上にアノード(陽極)、赤色(R)、青色(B)、緑色(G)、青色(B)、カソード(陰極)を順次成膜することで製造されます。この方式では、複数の発光層が作る白色光がカラーフィルターを通過して色を再現します。

 

従来のW-OLEDは、青色(B)、黄色(Y)、青色(B)の3スタック構造で、黄色(Y)の層は緑色(G)、黄緑色(YG)、赤色(R)などを1つの層として統合していました。しかし、4スタックW-OLEDではこれらがそれぞれ分離され、独立した赤色(R)層と緑色(G)層が形成されます。

 

LGディスプレイは「4スタックW-OLEDの鍵は、従来3スタックで統合されていた赤色(R)と緑色(G)をそれぞれ独立構成にした点で、これは大型OLED業界で初めての試み」と強調しました。また、「発光層の位置や高さ、構成要素の配列によって色や効率特性が大きく変化する。これにより、各層を分離して特性を最適化する方法を実現した」と説明しました。

 

技術的進化と性能向上

4スタックW-OLEDでは、青色(B)層と緑色(G)層に重水素置換技術を適用しましたが、赤色(R)層には適用されていません。また、従来の第3世代W-OLEDに採用されていたマイクロレンズアレイ(MLA)は、4スタックW-OLEDでは使用されていません(MLAは光取り出し効率を向上させる技術)。

 

最大輝度は4000ニットに達し、「発光量を増加させることで最大輝度を33%向上させた」とのことです。また、赤・緑・青の三原色が独立層として分離されたことで色純度が向上し、カラー輝度が前世代比で40%向上し、2100ニットを達成しました。

 

競合他社との比較

LGディスプレイが「業界初」とした独自技術は、同社の従来製品だけでなく、サムスンディスプレイの量子ドット(QD)-OLEDとの比較を含みます。QD-OLEDは青色(B)と緑色(G)を用いた4スタック製品で、発光層は青(B)-青(B)-緑(G)-青(B)の構成です。サムスンはさらに緑色(G)層を追加した「5スタックQD-OLED」を今年新たにラインアップに加え、まずモニター市場に投入する予定です。

 

LGディスプレイの4スタックW-OLED(資料:LGディスプレイ)
LGディスプレイの4スタックW-OLED(資料:LGディスプレイ)

 

LGディスプレイは、4スタックW-OLEDにおいて、パネル表面で反射される光とパネル内部で吸収された後に反射される光を全て打ち消す特殊フィルムを適用しました。LGディスプレイは「4スタックW-OLEDに特殊フィルムを活用した超低反射技術を適用し、内外部の光反射を99%遮断することで、日中のリビングルーム(500ルクス)でも映画館のように完全なブラックを実現する」と説明しました。LGディスプレイは、今年の最上位TV用W-OLEDラインアップに4スタックW-OLEDを適用する予定で、ゲーミングOLEDにも順次搭載する計画です。

 

エネルギー効率の向上

この製品は、電力消費が大きいAI搭載TVに対応するため、エネルギー効率を向上させました。LGディスプレイは「素子構造と電力供給システムの改善を通じてパネルの温度を下げ、従来比でエネルギー効率が約20%(65インチ基準)向上した」と述べています。

 

採用メーカーとリリース予定

今年、4スタックW-OLEDを量産に適用するTVメーカーとしてLGエレクトロニクスやパナソニックが挙げられています。LGエレクトロニクスは4スタックOLED TVを3月に発売する予定です。

 

外部報道への反論

一部の海外メディアでは、LGディスプレイの4スタックW-OLEDの青色(B)層2層のうち1層にリン光素子が適用されたと報じられましたが、これは事実ではありません。青色(B)層2層にはいずれも蛍光素子が使用されています。青色リン光素子はまだ量産適用可能な技術が開発されていない状況です。一方、赤色(R)層と緑色(G)層にはリン光素子が適用されています。なお、サムスンディスプレイのQD-OLED発光層でも青色(B)層には全て蛍光素子が、緑色(G)層にはリン光素子が使用されています。リン光素子の内部発光効率は100%である一方、蛍光素子の内部発光効率は25%です。

 

業績の改善と展望

LGディスプレイのジョン・チョルドン社長は、4スタックW-OLED技術説明会の冒頭で「昨年、反転の基盤を築いたことを踏まえ、今年は黒字転換を目指して努力する」と述べました。LGディスプレイは昨年の第4四半期に黒字転換(営業利益831億ウォン)を果たし、年間赤字規模は2兆ウォン縮小(2023年の営業損失2兆5100億ウォン→2024年の営業損失5600億ウォン)しました。

 

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以下はジョン・チョルドン社長と第4世代OLED技術に関する質疑応答です。

 

ジョン・チョルドン社長Q&A

Q1. 昨年第4四半期に黒字転換(営業利益831億ウォン)を果たし、年間赤字規模も2兆ウォン(2023年営業損失2兆5100億ウォン→2024年営業損失5600億ウォン)縮小しました。今年、四半期ごとの黒字転換はいつ頃予想されますか?また、中国企業の追随や市場環境が厳しい中で、LGディスプレイの対応戦略や黒字転換の戦略を教えてください。

A1. 今年の事業環境も例年と比べて良くなることはないでしょう。AIなどのチャンスはありますが、それを現実化するのは容易ではありません。昨年、開発、コスト競争力、品質の向上に力を注ぎました。今年も差別化された能力を発展させ、成果を改善できると考えています。ただし、四半期ごとの予測は簡単ではありません。今年も黒字転換を目指して最善を尽くします。

 

Q2. ジョン・チョルドン社長がLGイノテックからLGディスプレイに移籍して1年が経ちました。この1年間の感想と今年の計画を教えてください。

A2. 昨年、反転の基盤を築いたことを踏まえ、今年は飛躍を目指します。「飛躍」とは、意味のある黒字転換を指します。この1年、成果改善を目指して開発や基本能力の改善に取り組んできました。全社員が努力した結果、昨年は黒字転換には至りませんでしたが、改善が多く見られました。この結果、社員の自信が高まり、一致団結して進むことができました。これを基盤に、今年は目標を達成できると確信しています。

 

第4世代OLEDに関するQ&A

参加者:

カン・ウォンソク(大型商品企画担当常務)

イ・テリム(大型製品開発1担当常務)

イ・ジンサン(大型画質開発タスクチームPQ Task研究委員)

 

Q1. 第4世代OLEDの最大輝度4000ニットは、世界のディスプレイ市場で最高水準の製品でしょうか?また、中国の競合他社や後発企業と比べてどの程度の差がありますか?

A1. 現在、中国のパネルメーカーでTV用大型OLEDを量産している企業はありません。そのため、差を「年数」で表現するのは難しいですが、当社がOLED事業を開始してから10年以上、TV用OLEDの量産販売を行ってからは今年で11年目となります。少なくともその程度の差があると考えています。仮に中国企業が研究開発(R&D)を行っているとしても、その差は若干縮まる程度でしょう。

 

Q2. 第3世代(3スタックOLED)から第4世代(4スタックOLED)への変更の意義を教えてください。

A2. 青色は赤色や緑色に比べて素子効率が大きく劣るため、当社のW-OLEDやサムスンディスプレイのQD-OLEDでは基本的に青色層を2層以上使用しています。昨年までのW-OLED製品では、青色層2層の間に赤色と緑色を混ぜて黄色を表現していました。今年の第4世代OLEDの核心は、これまで混合されていた赤色と緑色をそれぞれ独立した層に配置したことです。これにより、独立した層でそれぞれの色の効率と特性を最適化する技術を実現しました。この技術は大型OLED業界で初めてのものであり、高難度の技術です。

 

Q. サムスン電子も第4世代OLEDを83インチTVに採用すると伝えられていますが、確認できますか?また、サムスン電子やLG電子以外に、ソニー、パナソニック、フィリップスなどの顧客企業への供給展望について教えてください。

A. 顧客企業のラインアップについては、顧客企業の事業に影響を与える可能性があるため、「正しい」「間違っている」といった形で明確に回答するのは難しいです。ただし、OLEDの中でもプレミアムTVクラスに適用可能だとの評価を受けています。現在、テレビでOLEDを使用し、97インチから42インチ、さらには8Kまでのフルラインアップを備えているのはLGディスプレイのみです。この点を踏まえれば、ある程度推測は可能かと思います。

 

Q. LG電子もミニLEDテレビを100インチに拡大し、LCDを基盤とするテレビの超大型化が主流になっています。第4世代OLEDが価格競争力の面で一般消費者にはアピールしづらいとの見方もありますが、大型OLEDを大衆化するための方向性について教えてください。

A. 中国のテレビ市場トレンドの一つとして、大型化・超大型化があります。OLEDもすでに超大型製品があり、97インチ、88インチ、83インチ、77インチと展開されています。ただし、価格競争力をどの程度確保できるかが一般消費者に受け入れられるかの鍵となります。

 一つ明確なのは、中国メーカーがミニLED LCDで目指しているのは「OLEDライク」な画質を実現することです。現在のBLU(バックライトユニット)のローカルディミングブロック数は680ブロックですが、展示会では5000ブロック、1万ブロックの製品を披露し、「私たちもOLEDに匹敵する」と主張しています。しかし、商品企画の観点からすると、これは消費者を惑わす行為だと考えています。

 OLEDは、4K解像度に該当するピクセル一つ一つを制御します。4K UHDテレビのピクセル数は約800万個です。LCDでいう「ローカルディミング」という表現を使うならば、OLEDテレビは「800万ブロックローカルディミング」を行うテレビだと言えるでしょう。

 これが重要な理由は、CES 2025でエヌビディアCEOのジェン・スン・フアン氏が基調講演でRTX50 GPUの優秀性を強調し、ピクセル単位でレイトレーシングを個別制御して最適化された画質を実現できると述べた点です。世界中で、ピクセル単位で入力信号を正確に再現できるのはOLEDテレビだけです。我々は超大型領域において最高の画質を既に実現しており、さらにコストを削減し、超大型でも2~3種類のシリーズ展開を計画しています。

 

Q. 昨年のCESでLGディスプレイは「当時最大3000ニットを超えるニットの実現は、コストの問題があるため課題」としていましたが、今年は4000ニット製品を公開しました。コスト問題は解決したのですか?

A. 3000ニットから4000ニットへの性能向上は、展示を通じて消費者に提供可能な価値を体験し、理解してもらうことを目指した結果です。OLEDディスプレイの原価におけるOLED素子の割合は一部に過ぎません。3スタックから4スタックにすると物理的に材料使用量が増えるため、材料費は一部上昇しますが、2024年には内部的な運営効率化などでコスト削減を進めました。最終的な製品コストは、消費者が受け入れられる価格帯で維持可能と判断しています。

 

Q. よい技術を提供しても市場に選ばれる必要があります。中国メーカーは実質的にOLEDテレビに参入せず、ミニLEDテレビが主流となっている状況で、大型OLEDテレビパネルの未来市場性についてどう見ていますか?

A. 現在、世界のテレビ事業を行う企業の中でOLEDテレビラインアップがないのは1社(TCL)だけです。他の中国メーカーは、中国内需市場では特殊な状況で販売していませんが、北米や欧州でのグローバル展開を目指す場合、当社の製品を利用しています。十分な競争力があると判断しています。

 

Q. 第4世代OLEDの生産は中国広州工場でまず準備されたと聞いています。本当ですか?また、その背景について教えてください。パジュ工場でも生産準備ができていますか?

A. テレビ製品の技術に関する回答のみが可能であることをご了承ください。

 

Q. 第4世代OLEDもボトムエミッション構造だと理解していますが、将来の第5世代や第6世代OLEDではトップエミッション構造を期待できますか?

A. 将来に関する話を含めると、当社はボトムエミッションだけを保有しているわけではありません。戦略的な判断に基づき、ある時点でトップエミッション構造のOLEDが必要とされるならば、それを選択することも可能です。しかし、ここ1~2年のロードマップを見る限り、現在のボトムエミッションで十分な競争力を持つ仕様とコストを実現しているため、しばらくはボトムエミッションを維持する予定です。選択肢は開かれています。

 

Q. 今年の第4世代OLEDの販売量目標および売上への貢献度見通しについて教えてください。

A. 来週(22日)の業績発表の際にお話しします。

 

Q. OLEDの世代交代サイクルが短くなっているように見えます。この流れが今後も続くのか、教えてください。

A. 第1世代から第2世代に移行するまで約10年かかりましたが、その後は1~2年ごとに新技術を搭載して大型OLEDの世代を更新しています。当社だけでなく、周辺の関連企業がインフラに参入しており、スピードが加速しています。OLED素子性能の向上を通じて第4世代製品を開発しましたが、これ以外にもソフトウェア、駆動、回路などすべての分野で多くの技術を準備しており、世代交代はますます早くなると予想されます。

 

Q. OLEDがテレビセットメーカーにアピールできる部分について教えてください。

A. テレビセットメーカーに提供可能な価値に関して、テレビ業界は毎年3つの軸を中心に、消費者に新しい差別化価値を提供しようとしています。1つ目は画質の向上、2つ目はデザイン、3つ目は新機能です。この3つが絡み合いながら進化しています。今年、テレビセットメーカーが強調しているのはAI機能を搭載した「AIテレビ」です。最適化された性能向上の価値を提供することを目指しています。当社はB2B企業として、毎年顧客企業の需要を把握し、彼らが消費者に提供しようとする価値を事前に準備する傾向があります。セットメーカーには、ディスプレイの画質やデザインの差別化を支えるパネル準備を進めており、セット戦略と合わせて毎年の発売計画を立てています。