AppleのVision ProがVR/MR市場を再構築、エンターテインメントから生産性ツールまでの応用を促進


2024年12月19日 LED Inside

 

TrendForceの最新レポートによると、2024年の世界VRおよびMRヘッドセットの出荷台数は約960万台に達し、前年比8.8%の増加が見込まれている。今年の出荷動向から、世界のVR/MRエコシステムを形成する3つの主要な業界トレンドが浮かび上がっている。

 

1.低価格デバイスの市場支配

2.エンターテインメント用アクセサリーから生産性ツールへのシフト

3.高級近眼型デバイス向けディスプレイ技術としてのOLEDoSの台頭

 

これらのトレンドは、今後数年間にわたりVR/MR市場に影響を与え続けると予想される。

 

 

2024年のVR/MRデバイス市場において、Metaは73%の市場シェアを維持し、世界トップの地位を保っている。成長の主な要因は、わずか299米ドルという低価格で提供される「Quest 3S」であり、同社の出荷台数は前年比11%増加した。VR/MR向けの新しいアプリケーションが限られている市場環境の中、Metaは低価格戦略を採用し、消費者の関心を引く方針を取っている。この戦略の一環として、Metaは「Quest 3S」を前倒しで発売するとともに、高価格帯モデル「Quest Pro 2」の開発計画を一時停止した。これにより、同社の焦点が予算重視のデバイスに移行していることが示されている。

 

SonyのPS VR2は、2024年の市場シェア9%を獲得し、2番手の地位を確保した。SonyはPS VR2をPCプラットフォームと統合し、アダプターを用いてコンテンツエコシステムを拡大しようとしたものの、機能の制限やアプリケーションの対応不足が影響し、市場での成績は伸び悩んだ。その結果、年間出荷台数は前年比25%減少した。

 

AppleのVision Proは2024年に市場デビューし、瞬く間に市場シェア5%を獲得し、VR/MR市場で3番目に大きなプレイヤーとなった。しかし、過去のApple製品の発売時と比べると販売実績は期待を下回った。これは主に、高価格とアプリケーションの少なさが要因とされている。

 

TrendForceは、Vision Proの参入に加え、Metaが低価格モデルの投入を前倒しし、高価格モデルの開発を中止したことから、手頃な価格が消費者の採用を左右する最も重要な要素であることを示していると分析している。消費者の価格に対する敏感さが、VR/MRデバイス市場においてLCD技術の支配的な地位を確立させており、市場シェアは80%を超えている。

 

Apple Vision Proの登場により、VRおよびMRデバイスは従来の消費者向けエンターテインメントの枠を超え、より広範な多機能型の生産性ツールへと進化しつつある。Vision Proは、文書編集やバーチャル会議から、医療や教育分野での高度な応用に至るまで、VR/MRデバイスの可能性と活用シーンを再定義している。このパラダイムシフトにより、他のブランドも自社のVR/MRデバイスの機能を再評価し、消費者市場だけでなく企業市場にも役割を拡大することが期待されている。

 

高価格帯デバイスの販売実績は期待を下回ったものの、Vision ProはVR/MRに対するユーザーの期待値を新たに確立することに成功した。また、業界で初めてOLEDoSディスプレイ技術を採用したデバイスとして、製品仕様や映像品質における新たな基準を打ち立てた。

 

Appleはハードウェア設計における豊富な経験を持ち、スマートフォン、タブレット、ノートパソコンの分野で培った専門知識を活かすことで、VRおよびMRアプリケーションの普及と多様化を牽引する主要企業となっている。今後、Appleは早ければ2026年にも次世代VR/MRデバイスを投入し、高価格帯と主流市場の両方をターゲットとする2つの異なるモデルを展開する戦略を進めると予測されている。

 

高価格帯モデルは、引き続きOLEDoSディスプレイ技術を採用し、3,000 PPIを超える解像度を実現することで、卓越した視覚体験を提供すると予想されている。Appleは、生産コストの削減を目的に、Sony以外のサプライヤーからの部品調達を検討する可能性があり、現在生産能力を拡大している中国のサプライヤーも含まれる可能性がある。

 

一方、主流市場向けモデルでは、価格に敏感な消費者をターゲットとし、手頃な価格とコスト効率の向上に重点を置くと考えられる。このモデルのディスプレイとしては、ガラス基板のOLEDやLTPOバックプレーン技術を用いたLCDが候補とされており、性能とコストのバランスを取る選択肢となる。この二本立ての戦略により、Appleは高価格帯と主流市場の両方を同時に攻略し、グローバルなVR/MR市場における影響力をさらに強化すると予測されている。