2024年の3四半期スマートフォン用OLED出荷台数が27%増加、LGディスプレイは50%の大幅成長


2024年11月21日 The Elec

 

市場調査会社シグマインテルの集計によると、2023年3四半期における全世界のスマートフォン用有機EL(OLED)出荷台数は前年同期比27.1%増の2億1000万台となりました。このうちフレキシブルOLEDは同22.5%増の1億6000万台となっています。中国市場での需要増加は限定的だったものの、Appleなどスマートフォンメーカーによる中価格帯から高価格帯モデルの発売が大きく影響しました。一方、リジッドOLEDの出荷台数は同44.1%増の5080万台でした。

 

3四半期のスマートフォン用OLED出荷台数でトップシェアを誇るのはサムスンディスプレイで、9700万台(シェア46.0%)を記録しました。このうちフレキシブルOLEDは前年同期比4.1%減の5800万台、リジッドOLEDは50.3%増の3900万台となっています。フレキシブルOLED出荷台数の減少については、AppleのiPhone向け需要が好調だった一方で、サムスン電子のGalaxy向け需要減少がマイナス要因となったとシグマインテルは分析しています。

 

中国パネルメーカーのスマートフォン用OLED出荷台数は前年同期比5.2%減の9800万台(シェア46.4%)でした。2023年前半、中国のスマートフォンメーカーはフレキシブルOLEDの在庫を積極的に増やしていました。

 

BOE(京東方科技)のスマートフォン用OLED出荷台数は前年同期比11.2%増の3100万台でした。次いで以下のメーカーが続きます:ビジョノックス(Visionox):2000万台(シェア9.5%)、CSOT(華星光電):2000万台(シェア9.4%)、天馬(Tianma):2000万台(シェア9.3%)。シグマインテルは、中国メーカーの新規OLEDラインが本格稼働したことで、パネルメーカー間の競争が激化していると評価しました。

 

第3四半期 スマートフォンOLEDパネルメーカー別出荷台数(データ=シグマインテル)
第3四半期 スマートフォンOLEDパネルメーカー別出荷台数(データ=シグマインテル)

 

LGディスプレイの3四半期スマートフォン用OLED出荷台数、50%増の1600万台

LGディスプレイの2023年3四半期におけるスマートフォン用有機EL(OLED)出荷台数は、1600万台(シェア7.6%)となり、前年同期比で50%増加しました。LGディスプレイのスマートフォン用OLEDの顧客はAppleのみであり、3四半期の出荷分1600万台はすべてiPhoneに使用されるフレキシブルOLEDです。

LGディスプレイは7月末の第2四半期業績発表後のカンファレンスコールで、次のように述べています。
「過去2年間は初期の供給に問題がありましたが、今年は適時の量産と安定的な供給体制により、これまでとは異なる姿をお見せできると期待しています。」

その3カ月後の10月、LGディスプレイは以下のようにコメントしました。
「3四半期の業績には希望退職に伴う一時的な費用が反映されていますが、それを除いた実際の事業成果は前四半期および前年同期比で大幅に改善されました。
(中略)事業領域ごとの計画と戦略については、中小型OLED事業において安定的な供給能力と技術的リーダーシップを基盤に事業競争力を強化していきます。」

 

2023年第1四半期~2024年第3四半期 技術別スマートフォンパネル出荷台数(資料:シグマインテル)
2023年第1四半期~2024年第3四半期 技術別スマートフォンパネル出荷台数(資料:シグマインテル)

 

フレキシブルOLED、リジッドOLED、非晶質シリコン(a-Si)液晶ディスプレイ(LCD)、低温ポリシリコン(LTPS)LCDを合計した2024年第3四半期の世界スマートフォンパネル出荷台数は、前年同期比7.6%増の5億6000万台となりました。南中国市場での在庫需要の拡大やスマートフォン市場の成長率が予想を上回ったことが要因です。

 

出荷台数の上位メーカー

1位:BOE

総出荷台数は1億6000万台で、そのうちフレキシブルOLEDが3100万台、a-Si LCDが1億2000万台でした。

 

2位:サムスンディスプレイ

総出荷台数は9700万台で、すべてOLEDです。

 

3位:CSOT

総出荷台数は5600万台で、そのうちOLEDが2000万台、LCDが3600万台でした。CSOTは8.6世代T9生産能力の拡大により、スマートフォン向けa-Si LCDの出荷増加につながりました。第3四半期の出荷台数5600万台は前年同期比で93%増加しました。

 

技術別詳細

スマートフォンa-Si LCD:

第3四半期の世界出荷台数は3億1000万台で、前年同期比14.1%増加しました。東南アジアなどで低価格帯商品の需要が旺盛で、スマートフォンメーカーも市場シェア維持のためにa-Si LCDを積極的に調達しました。また、低価格のため修理市場(リファービッシュ市場)でも依然として需要が高いです。

 

スマートフォンLTPS LCD:

第3四半期の出荷台数は3500万台にとどまり、前年同期比で55.4%の大幅減少となりました。

 

第3四半期 世界スマートフォンパネル出荷台数ランキング (OLED + a-Si LCD + LTPS LCD)(資料:シグマインテル)
第3四半期 世界スマートフォンパネル出荷台数ランキング (OLED + a-Si LCD + LTPS LCD)(資料:シグマインテル)

 

2024年第3四半期累計のスマートフォンパネル出荷台数は16億2000万台に達しました。シグマインテルは、今年の世界スマートフォンパネル出荷台数が過去最高を記録すると予想しています。この調査には、スマートフォンの新製品とリファービッシュ製品(修理済み再生品)用パネルの需要が含まれています。

 

主な市場動向

新製品市場の縮小とリファービッシュ市場の拡大:

スマートフォン新製品の市場規模は、COVID-19以前の14億台から、COVID-19以降は11~12億台に減少しました。一方で、リファービッシュ製品や中古スマートフォンの市場規模は2億台以上に拡大しています。

 

2025年の展望:

シグマインテルは、2025年には競争の激化により、スマートフォンメーカーがコスト圧力に直面すると予測しています。この中で、パネルメーカーは出荷量の拡大と価格維持のどちらを優先するかの選択を迫られるとしています。

 

a-Si LCDの影響:

新たな8.6世代a-Si LCDラインの生産能力拡大が、LTPS LCD需要の減少を招いており、中低価格帯パネル市場での競争がさらに激化すると見込まれます。

 

フレキシブルOLEDの成長鈍化:

フレキシブルOLEDは普及率の上昇に伴い、成長ペースが鈍化する可能性があります。

 

2024年第3四半期と累計出荷台数(資料:シグマインテル)
2024年第3四半期と累計出荷台数(資料:シグマインテル)