サムスンディスプレイ、2020年の量産を目指し、スマートフォン向けにLTPO技術を開発


2019.02.07 ET News

 

低温多結晶シリコン(LTPS)とオキサイド(酸化物)の利点を組み合わせた新しい薄膜トランジスタ(TFT)技術である、LTPO(Low Temperature Polycrystalline Oxide)が2020年のスマートフォンに適用される見通しだ。アップルが世界の主要パネルメーカの開発を要求した新たなTFT技術方式で実装の難しさを経験したが、今年にはAppleウォッチに適用されるなど、商用化の道が開かれた。2020年には、スマートフォンにも適用されるほどの技術進展を遂げるものと見られる。 

 

7日、業界によると、サムスンディスプレイはLTPO TFT技術を2020年にリリースされるiPhoneの新製品に適用するという目標を立てた。過去のCESで開発中のLTPO技術を主要ディスプレイ関係者に紹介し、目標量産スケジュールを共有した。

 

ディスプレイTFT技術は大きくアモルファスシリコン(a-Si)、LTPS、酸化物に区分される。アモルファスシリコンは、主に普及型の大・中小型LCDに適用される。LTPSと酸化物はプレミアム技術に分類される。各技術の特性のために、LTPSはスマートフォンパネルでは、酸化物はノートブック・タブレットと大型TVパネルに主に使われる。

 

LTPOは、電荷移動度の安定性が高いLTPSの利点と、TFTの均一性が良くリーク電流が少ない酸化の利点、を一つに結合した技術である。何よりも、モバイル機器の消費電力を大幅に削減できる新技術として評価される。各ピクセルにLTPSとオキサイドを同時配置する形で設計する。

 

消費電力が減れば、大画面のスマートフォンで同じバッテリー容量でもより長く使用することができる。使用時間を増やすために、バッテリーの密度を上げてもよい。同じ消費電力でより大きな画面を実装することができ、大画面フルスクリーントレンドに符合する。

 

市場調査会社IHSは、LTPO技術を適用すると、同じ画面サイズのスマートフォンでの使用時間が既存の90時間から100時間に増加することができると分析した。全体的に消費電力を5〜15%ほど減らすことができるものと見た。 

 

アップルは過去の2015年頃に、主要なパネルサプライヤであるサムスンディスプレイとLGディスプレーにLTPO開発を要請した。

 

継続した研究開発の末に、LTPO技術は昨年にアップルウォッチに初めて適用された。アップルは、アップルウォッチ4にLTPOを導入して電力効率を高めたと明らかにした。LGディスプレーがLTPO TFTを開発し、アップルウォッチ4パネルを供給した。

 

アップルウォッチ4は、従来の本体サイズは38㎜、42㎜でそれぞれ40㎜、44㎜に大きくなった。ベゼルレスデザインで、画面を30%以上拡大した。 

 

AppleにiPhone用OLEDを供給するサムスンディスプレイは、2020年を目標にLTPO TFTを適用したスマートフォン用フレキシブルOLEDを開発する計画である。すでに一定のレベルの完成度を確保したものと思われる。今年の1年間で技術完成度を引き上げて、来年のモデルに適用することができる。 

 

業界では、LTPO TFTが中小型OLED市場において、新たな差別化要因となることができると見た。中国が追撃する中小OLED市場で、韓国企業が技術格差を広げることができるようになる。低消費電力を実現した技術でありフォルダブルなど、新しいフォームファクタで、より優れたユーザー体験を提供することができる。 

 

LTPO技術を量産するには、追加の設備投資が必要である。従来より多くのステップのフォトマスク工程が必要とされるため、初期歩留まりの低下と工程時間の増加が予想される。蒸着、エッチング、露光などの工程にわたって製造装置・部品・素材の使用量が増加することになる。

 

この分野専門家は「LTPOは、既存の中小型OLED工程よりも、約20〜30%も工程ステップが増加する」とし「これによる歩留まりの低下も予想される」と分析した。