2025年3月4日 The Elec
今年、Samsung Electronicsが液晶ディスプレイ(LCD)テレビのパネル調達先としてCSOTの割合を減らすとの見通しが出ている。CSOTがLGディスプレイの中国・広州LCD工場を最終的に買収すれば、LCDパネル市場におけるCSOTの影響力が増大するためだ。一方、LG ElectronicsはCSOTからのLCDテレビパネルの調達割合を増やすとみられる。LG ElectronicsはBOEに集中しているLCDテレビパネルの調達先を多様化する必要がある。
市場調査会社オムディアは、1月下旬に日本で開催したフォーラムでこのような見通しを示した。オムディアによると、Samsung ElectronicsとLG Electronicsの両社が今年調達するLCDテレビパネルのうち、中国製パネルの割合は61%に達すると予測された。2023年の67%から2024年には55%まで減少したものの、今年は再び増加する見込みだ。これは、LGディスプレイがLCDテレビパネル事業からの撤退を控えているためである。
オムディアは、Samsung ElectronicsがLCDテレビパネルの調達において、CSOTの割合を昨年の23%から今年は19%に引き下げると予測した。その一方で、HKCの割合は11%から15%に、BOEの割合は3%から4%に増加すると見られている。
Samsung Electronicsはここ数年、CSOTからLCDテレビパネルを最も多く調達してきた。しかし、CSOTがLGディスプレイの広州LCD工場を最終的に買収すれば、Samsung ElectronicsにとってCSOTへの依存度が高まることが負担となる可能性がある。さらに、CSOTの親会社であるTCLのテレビ出荷台数も増加している。
複数の市場調査会社が集計したデータによると、TCLとハイセンスのテレビ出荷台数はほぼ同じだが、TCLの関連会社であるTCLモカがODM(生産者開発生産)方式で製造するテレビの出荷量を加えると、TCLは世界のテレビ出荷台数ランキングで確固たる2位となる。出荷台数ベースでは、1位がSamsung Electronics、3位がハイセンス、4位がLG Electronicsである。
Samsung Electronicsの今年のLCDテレビパネル調達先の割合は以下の通りと予測されている。
・CSOT: 19%
・シャープ: 18%
・HKC: 15%
・イノラックス: 14%
・AUO: 14%
・LGディスプレイ: 11%
・CHOT: 4%
・BOE: 4%
オムディアは、LG Electronicsが今年のLCDテレビパネル調達先としてBOEの割合を40%に引き下げると予測した。昨年のBOEの割合は44%だった。一方で、LG ElectronicsはCSOTの割合を8%から10%に、シャープの割合を4%から6%に引き上げると見られている。また、AUOの調達割合も今年は1%になると予想された。
LG Electronicsはこれまで、テレビ市場の競合であるTCLを牽制するため、CSOT製パネルの使用を抑えてきた。しかし、現在ではTCLとLG Electronicsの市場シェアの差が広がっている。
今年の世界のLCDテレビパネル出荷台数の予測は、昨年の推定値(2億4,220万台)より1.7%少ない2億3,810万台となる見込みだ。しかし、LCDテレビパネルの出荷台数は減少するものの、出荷面積は昨年(1億7,477万平方メートル)より5%増加し、1億8,429万平方メートルに達すると予測されている。これは、テレビの大型化傾向によるものだ。
今年のサイズ別LCDテレビパネル出荷台数について、55インチ以上のモデルはすべて成長が見込まれる。一方、50インチ以下のモデルはすべて減少するとオムディアは予測している。サイズ別のLCDテレビパネル出荷台数と前年比増減率の予測は以下の通り。
・32インチ以下: 5,240万台(15.5%減少)
・40インチ台: 5,970万台(1.4%減少)
・50インチ: 2,440万台(23.8%減少)
・55~58インチ: 4,190万台(19.2%増加)
・60インチ台: 2,980万台(5.4%増加)
・70インチ台: 1,840万台(9.5%増加)
・80インチ台: 900万台(42.9%増加)
・90インチ以上: 200万台(67.1%増加)
中国のテレビメーカーは、大型化の流れに加え、ミニLEDテレビの販売にも注力している。これは、プレミアムテレビ市場で有機EL(OLED)テレビを牽制する狙いがあるためだ。オムディアは、今年のミニLEDテレビの出荷台数が920万台となり、OLEDテレビの出荷台数710万台を上回ると予測している。
サムスン電子が、ミニLEDテレビよりもOLEDテレビの出荷台数を増やしたためだ。
サムスン電子の年間ミニLEDテレビ出荷台数は、2021年の130万台から2022年には230万台に増加したものの、2023年には170万台、2024年には140万台へと減少した。一方、サムスン電子のOLEDテレビ出荷台数は、2023年の100万台から2024年には144万台に増加した。サムスン電子のOLEDテレビとミニLEDテレビの合計出荷台数は、2022~2024年の間、260万~270万台の水準を維持している。
今年のメーカー別LCDテレビパネル出荷台数の予測は、以下のとおり。
・BOE:6,000万台
・CSOT:5,650万台
・イノラックス:3,940万台
・HKC:3,620万台
・AUO:1,700万台
・CHOT:1,320万台
・シャープ:1,150万台
・LGディスプレイ:400万台
・天馬(ティエンマ):30万台
全体の出荷台数(2億3,810万台)のうち、中国企業の割合は69.8%に達する見込みだ。